白黒テレビの中に閉じ込められたのは、どうやらミストだけらしい。 というよりも、画面いっぱいに恐怖と不安をあらわにしている表情で困惑しきっているミストの姿で埋め尽くされているのだ。いくら、今のテレビのように鮮やかな色で映っていなくても――ミストが僕らに助けを求めているのは分かる。 ―――そこに引田やライムス、それにサンといった他の仲間達の姿は見えない。 【え～……突然ですが…………トウキョウΧΧΧΧが突如として起きたため……番組を変更いたします……】 すると、急に―――テレビの中から抑揚のない機械じかけのような淡々とした若い男性の声が聞こえていた。 「ま、待ってよっ………ミスト、ミスト……っ……！！？」 【トウキョウΧΧΧΧが…………トウキョウΧΧΧΧは……ｻﾞｻﾞ―ｯ……突如として……トウキョウ……ｻﾞ―ｯ……ΧΧΧΧ……は……トウキョウ……ΧΧΧΧ……は……ｻﾞｻﾞ―ｯ…………ｻﾞ―ｯ……】 壊れたラジオのように狂ったように同じような言葉を繰り返す冷たい機械のように不気味な若い男性の姿が、慌てふためきながら僕と誠に助けを求め続けていたテレビ画面を占拠し―――やがて、完全に白黒テレビの画面全体を乗っ取ってしまうのだった。