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白黒テレビに閉じ込められたミストは何を思う――⑤
「このこのうまれたひ……って、ミストが生まれた日って事だよね?そんな……ミストが生まれた日なんて――分からないよ……っ……」
「…………」
白黒テレビの画面の向こう側で必死に助けを求めてくるミストの様子を見つめながら、ポツリと不安げに呟く僕の隣で誠がテレビ画面の、とある部分を穴があく程に見つめていた。
【 _:_ _ 】
僕らから見て、テレビ画面の左上の部分に上記のようなマークが存在していたのだ。おそらく、白黒テレビの画面が切り替わっていた瞬間から表示されていたと思われるが―――ミストの慌てている様子と砂嵐状態となった画面に気を取られるあまりに気付くのに時間がかかってしまったのだ。
因みに、【 _ 】の部分らついたり消えたりと点滅しているのが分かる。
「なるほど、ここに正解の数字を合わせればいいのか―――しかし、生まれた日……生まれた日……ミストが生まれた日なんて……そもそも此処には――存在しない……はず……っ……」
「存在しない……そうか、分かった……ような気がする……誠、ちょっと試してみてもいいかな?」
と、僕が誠の呟く《存在しない》という言葉に反応し、急いで回転式のダイヤルを回してチャンネルを合わそうとした、その時―――、
【いっかい うまれたひ は いっかい だから いっかい しか まわせない まちがえたら おしまい おしまい おしまい 】
画面を埋め尽くしてしまう程に小さな―――しかし、存在感のある白い字がテロップとして流れる。
思わずダイヤルを回そうとしていた手を止めて、躊躇してしまう僕ーーー。
しかし、そんな僕の震える手の上から優しく重なり合う誠の手の温もりを感じて、一度は止めた手を動かし始める。
ーーーガチャ、
ーーガチ、ガチャ
【0:0 0 】
ダイイチキュウにいた時に嫌という程に見慣れていたテレビの時計の部分にダイヤルを回して数字を合わせた。
本来の白黒テレビのチャンネルを合わせるための回転式ダイヤルには存在しない【0】という数字の意味ーー ー。
それは、全てはこの問いかけのためだったのだ。
ミストはずっとミラージュに存在しているため、《ここで生まれた日》という概念は通用しない。何故なら、この今いる世界は―――《ダイイチキュウの昔の姿》だからだ。
つまり、存在しない=0という事だ。
(な、何も起こらない――まさか、まさか――間違えてたのかな―――じ、じゃあミストはこのまま――ずっと―――)
―――ザザー、ザザ……ザザー……
【ばんざーい、ばんざーい、よそもの の ちえ ばんざーい 】
【せいかい せいかい がんばりました よそもの の おにいさんたち つぎ も うちかって うちかって また あいましょう】
僕が不安に感じているとノイズが走ってから、画面が真っ白になり今度は真っ黒な文字でテロップだけが流れた。
ザザ―ッ……ザ―ッ……ザ―……ブツンッ…………
そして、急に映像が途切れてしまったかと思うと―――、
―――ドサッ!!!
「いっ……たーい……って―――ユウタ、マコト!?よかった、ミスト……変な箱の中から出られた!?」
「ミ、ミスト……よかった、本当によかった!!」
「あそこから出られてよかったな……ミスト……優太に感謝しろよ。」
勢いよく白黒テレビの中から飛び出てきたミストに驚きつつ、慌てて彼の体を受け止めた僕は誠と共に大事な仲間である彼と無事に再会できた事を喜び合うのだった。
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