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部屋の中に散らばるは――色褪せつつある玩具たち③
―――オカッパ頭の女の子が持っているもの。
ダイイチキュウで過ごした事がある僕と誠が歴史の教科書の中で見た事があるソレは―――意外としか言い様のないものだ。
ソレは―――画用紙に描かれた紙芝居でオカッパ頭の女の子は可愛らしい大きな瞳を此方にじぃっと向けながら両手でソレを持っている。
白黒テレビの画面の中で、黒いオカッパで白い丸襟のブラウスを身に付けてる女の子が、教科書の中でしか見た事のない紙芝居を持っている。
そのアンバランスさが、何故か僕の不安を異様な程に掻き立てた。
「ね、ねえ……ユウタ、マコト……これにかかれているのって……そこにかかれているヒキタに……似てない?」
オカッパ頭の女の子が画用紙をゆっくりと捲る。そうすると、パラパラ漫画のように画用紙に描かれた引田によく似た白黒の人物と、その上に説明口調でかかれた白黒文字が流れるように動き出す。
まるで、意思を持っているかのような滑らかな動きだ。
「確かに……引田のやつに似ている気がするな。もしかしたら、これは――引田がこの塗り絵に閉じ込められるまでの経緯を示しているのか……けど、なんのために……この白黒井テレビのオカッパ娘はそんな事を……っ…………」
「…………ヌリエ?シロクロテレビ……って……何それ!?」
ダイイチキュウで過ごした事のないミストは目を輝かせつつ、興味津々な様子で
《白黒テレビ》と《塗り絵》について簡単に説明した。
「へ~……ダイイチキュウにも、そんな魔法みたいな事が出来るものがあるんだね。それじゃ、これは――何?どんなものなの?」
ふいにミストが身をかがめて尚も興味津々な様子で畳の上から、ある物を拾いあげる。ミストが拾いあげたものから、甘い香りがフワリと漂う。
それは、昔のお菓子を模した――消ゴムだった。
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