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部屋の中に散らばるは――色褪せつつある玩具たち④

(こ、これ―――もしかしたら、これから何かの役にたつかもしれないからポケットにしまっておこう……) ふわり、と甘い香りがするお菓子を模した懐かしの消ゴムを―――おもむろにポケットへと入れた僕は、再び白黒テレビの画面内で紙芝居を捲っているオカッパ頭の女の子の方へと目線を戻した。 【ウソツキ ウソツキ ウソツキ 】 【ワタシタチ ガ カッタラ ヨソモノカラ テヲ ヒクッテ イッタノニ ウソツキ ウソツキ ハナコ チャン ノ ウソツキ 】 【ユビキリ ゲンマン ウソ ツイタラ ハリセンボン ノーマスッ ユビキッタ 】 ふいに―――白黒テレビの画面内で異変が起こり始める。オカッパ頭の女の子(ハナコチャンというらしい)が持ってた紙芝居の中に描かれた2・3人の女の子達が恐ろしい鬼のような歪んだ顔をしたかと思うと、そのまま―――先程までは何も描かれていなかった筈の紙芝居の背景の部分に片仮名でハナコチャンを攻め立てる鋭い言葉がじわり、と浮き出てきて飛び跳ねるように動き出す。 それだけならば、まだしも―――やがて、そのハナコチャンに対する文句ともとれる言葉が、ギザギサした刃物のような―――あるいは花の刺のような鋭い形状へと変化していき――注射針のように鋭い切っ先がハナコチャンに向けられたかと思うと容赦なく、ぐさりと突き刺してしまう。 ブツンッ………… と、途端に―――今度こそ完全に白黒テレビの画面の反応が途絶えてしまう。 「今、消える瞬間に……一瞬だけカラーになった気がしたが……気のせいか?」 「…………え、全然気付けなかった。それにしても、引田は塗り絵の中に閉じ込められてしまっているとして……他のサン達は……一体、どこに……っ……」 誠に話しかけた僕は―――引田以外にも消えてしまっている仲間達が何処にいるのかという手懸かりを探すために、もう一度辺りを見渡してみる。 そして、半分ほど入り口が開けられている押し入れが妙に気にかかってしまい、なんとなくとはいえ―――そちらへと足を進めて行くのだった。

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