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ミストと誠とマネマネさん②

「……ト…………ミスト……僕ならここに……いるよ……だから……振り向いてみてよ……」 「…………っ……!?」 甘い香りのする消ゴムが、なぜこんな所に落ちているのか、という疑問とコレを拾いあげたとして、そもそもどうすればいいのだろうか、という疑問とで頭の中が埋め尽くされてしまった彼が困惑していると―――ふいに、背後から聞き慣れた仲間での――ユウタのこえが聞こえてきた。 反射的に振り向こうとしたミストだったが、そこで―――ふと、ある違和感を抱いてピタリと動きを止めた。 ―――今まで散々聞いてきた優太の声。 ―――口調も声質も優太と全く同じように思える。 (で、でも―――何か……何かが変だ……っ……) 元々、普通の人間よりも聴覚が優れているエルフのミストは頭の中で必死にその微かな違和感を探る。 そして、とある答えに行き着いた―――。 (そうか…………ユウタと口調も声質も同じだけれど……響きが違うんだ……ええっと……なんだったっけ……ダイイチキュウで言うところの……イント……ネーションだっけ……) 昔、王宮で暮らす仲間の誰かからダイイチキュウの言葉の一部を教えてもらった事のあるミストが必死で考えぬいた末の答えだった。 しかし、それが分かったところで―――ミストは新たな問題に気付く。 ―――例え、自分に話しかけてきた謎の存在が本物の優太ではないと分かった所で、押し入れに向かっている自分は振り向く事が出来ないうえに、身動きひとつとる事すら叶わないのだ。 (この謎の存在はミストの背後から話しかけてきた……しかも耳に息がかかりそうなくらいに近くで……つまり、謎の存在から少し離れた場所にいる誠に……話しかけるには、一度振り向いてから話しかるか、声だけで誠に知らせる必要がっ……) 「……………」 (こ、声が……ミストの声が……出ない!?) とりあえず、声だけを出して誠に知らせるという方法を試そうとしたミストだったが―――まるで何かに口元をきつく抑えられてしまっているかのように……どんなに声を出そうとしても、それすら叶わないと理解し―――本当にどうすればいいのか分からなくなってしまう。 「マコト、マコト…………こっちにユウタがいるよ……押し入れの方に来て……ミストもユウタも……こっちにいるから!!」 「…………っ……!!?」 更に最悪な事に、その優太の姿をした謎の存在は―――声だけをミストのものに真似て、少し離れた場所にいる誠へと愉快げに話しかけるのだった。

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