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マネマネさんの正体①

「優太は……いや、俺の愛する優太は――そんな話し方でしゃべらない。たとえ、声と姿は優太と一緒でも……その響きや口調までは真似できなかったな。さて、忌々しいオマエの正体を暴かせてもらうぞ!」 ―――ゴシッ…… ――ゴシ……ゴシッ……… 無事にソレに気付かることなく《消ゴム》とやらを誠に手渡す事が出来てミストはホッと胸を撫で下ろした。そして、誠が何の目的でそのような指示をしてきたのか不思議に思っていると、彼は急に【優太の声と姿を真似た謎のソレ】の顔全体を《消ゴム》とやらでゴシゴシと擦り始めるのだ。 【く、くそっ……せっかく良いところまで騙せたのにっ……このままじゃ……美しいあの方に怒られてしまうではないか……っ…………】 誠は忌々しげに文句を言っている【優太の声と姿を真似たソレ】の悪態に耳を貸すことなく、ただ一心に《消ゴム》で顔の部分を擦りつけるのだが、ふいにピタリと動きを止めた。 「…………ミスト、コイツの名前が……分かるか?おそらく、ミラージュに存在している魔物だろうけど、俺は名前が分からない。」 「コ、コイツは……下級召喚魔物のインプじゃないか……な、何故……コイツがこんな場違いな場所に?普段は滅多に外へ出る事すらないのに。」 《優太の声と姿を真似ていたインプ》の顔が、鉛筆でモジャモジャと出鱈目に書きなぐったかのような状態に歪み終えると、今度は頭と顔の部分に変化が起こる。 ―――頭の両脇には、小さいものの鬼のような角がニョキニョキと生え、 ―――両目が醜くつり上がり、瞳の色は濁った灰色へと変化を遂げ、 ―――先程までは人間のものにソックリだった鼻はみるみる内に皺が周辺に広がっていき、人間のものよりも二倍くらいの大きさに赤く腫れ上がる。 なんとも形容し難い顔を持っている【インプ】は、誠とミストから見られると、醜い己の顔を隠すように両手全体で顔を覆うのだった。

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