447 / 713
寝つけぬ夜に①
※ ※ ※ ※
誠との夢のような行為を終えた後、僕らは一緒の寝床で布団にくるまりながら眠りについた。
先程のインプとの戦いと誠との甘いひとときを過ごした事により心身共に疲れていた僕は、てっきり熟睡できるかと思い込んでいた。しかし、なかなか寝付けずに何度も寝返りをうってしまう。先程まで感じていた視線も消え去り、これでやっと眠りにつく事が出来る―――と安堵していたのに。
すると、不意に―――ごろん、と横に向いて寝返りをうった僕の目に世界で一番大好きな誠の格好いい寝顔が飛び込んでくる。すう、すう―――と心地よい誠の寝息が聞こえてきて何となく彼の寝息と僕の吐息のリズムとを合わせてみる。
そうすると、僕らの前から姿を消してしまった美々という少女の事とか、未だに救えていないナギや想太の事とか―――これから戦うことになるであろうスーツ姿の金野という男や側近のアラクネの事など様々な不安要素が僕の心から一時とはいえ消え失せてスーッと心が軽く生っていくのが分かる。
そして、やっとのことで―――僕は徐々に眠りの世界に誘われていくのだった。
※ ※ ※ ※
ふっ…………と唐突に目を覚ました。
この場には、時計というものなど存在しないため今が何時かは分からない。
しかし、ひとつ―――分かっている事がある。
「……っ…………」
誰かが、仰向け状態になっている僕の体の上にのしかかっている。しかも、僕の口元を大きな手で抑えている状態で―――。
「………っむ……んむっ…………」
「…………」
誰、と尋ねたかったのだが―――口元を塞がれている状態のため、それは叶わない。もしかしたら、誠が僕をからかっているのかもしれない……と願望じみた考えを頭の中で思い浮かべた時―――、
ひた………っ……
と、首筋に冷たく鋭い何かが軽く突き付けられた事に気づいてしまうのだった。
ともだちにシェアしよう!