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寝つけぬ夜に②
「おっと…………それ以上―――抵抗しない方がいいよ……?君の隣にいる……大好きな彼に知られたくはないだろ?」
「……っ…………!?」
ぐっ…………と僅かに刃物(よく見えないけどおそらくナイフか何かだ)を突き付ける手に力を込めてきた男は怯えている僕の耳をペロッと舐めてから囁いてきた。
―――この男は少し前に引田へ厭らしい事をしようとして企んでいたダイイチキュウから飛ばされた人たちの内の一人だ。
(なっ………何でっ…………この人は……僕にこんな事を……もしかして、さっき……視線を感じたのは……っ……この人……だったんだっ……)
「もう一人の子の時は失敗しちゃったからね。まあ、君も可愛いし―――それに……」
「……っ……やっ……んんっ……」
「さっきから―――君と隣のこいつとの情事を見せつけられて……ここが溜まってるんだよね……君の厭らしい姿のせいなんだから……何とかしてよ……ねえ、淫乱な雌猫ちゃん?ああ―――抵抗したってムダだよ?隣のこいつを傷つけられたくはないよね?」
ぎらり、と銀色の刃先が輝きを帯びて僕はビクッと体が震えてしまう。誠にまで危害が加わってしまうと思った僕は出来るだけ男の怒りを買わないようにコク、コクと頷いてしまう。
気が緩むと―――涙が出そうになってしまう程に強烈な恐怖に支配されてしまっていた僕だけれど、それが吉となしたのか男は気を良くしたよう微笑みながら一旦首から刃物を持つ自身の手を離すと、グイッと手を掴んで引き寄せてから無抵抗のままの僕を半ば強引に別の場所へと連れて行くのだった。
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