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ようこそ、【空中都・青春区・空海】へ③
※ ※ ※ ※
「どうして……どうして―――こんな酷い事をするんですか!?彼は……いや、彼らダイイチキュウから来た人たちは――僕達のように、あなた達を邪魔する訳でも――敵でもないのに……っ……」
【…………あのチカっていう王子様の恐ろしさはキミにも分かるだろう?彼のご機嫌を損ねないためさ。あの可愛らしい人魚の女の子を浚ったのも――これからキミを人魚の女の子がいる世界にまで飛ばすのも、ぜーんぶ退屈嫌いな王子様の命令さ。結局は、何も変わらなかった……ダイイチキュウで自ら魂を解放しても――結局は生まれ変わってここに来ても誰かの命令に従っていくしかない……オレには元々自由なんかないんだ……前の世界にいた頃からね】
ほんの少しだけ―――スーツ姿の男が弱気そうに微笑んだ気がした。でも、スーツ姿の男に同情など出来る訳もなく僕は彼をジロリと睨み付ける。しかし、弱気になったのは―――ほんの一瞬ですぐにスーツ姿の男はダイイチキュウから飛ばされてきた内の一人の男の命を弄んだ事に対して怒りを露にしている僕をからかうようにニコニコと穏やかな笑みを浮かべながら此方へと優雅に近づいてくる。
ズイッ…………
【さあ、読んで……そこに――キミが救うべき淡く美しい命がある……キミが手に持つ羊皮紙に――それは書いてある……その羊皮紙に書いてある文字は持っている者が負の感情に囚われている時にしか読めないんだよ―――さあ、今が――チャンスだ……ドクター・Cに宜しくね……オレは元気だって伝えておいてよ……ユウタくん?】
そのスーツ姿の男の言葉を聞いた途端に―――何故か僕は急に手に持ったままの羊皮紙の文字を読まなければいけないという強い強迫観念に囚われてしまい―――、
「ξξ&Θ#δ都・δδφнΨ区・ξξ&ΦЙ$」
気が付けば―――スーツ姿の男が言う通りに半ば強引に羊皮紙の文字(唐突に呼び方が頭の中に浮かんできた)をスラ、スラと流れるように迷いなく唱えてしまうのだった。
そこで、一度……僕は意識を手放しかける―――。
意識を手放す直前―――天井に広がる【人魚たちが優雅に泳いでいる海】という幻想的な青い景色が僕を飲み込まんばかりに眼前へと迫ってくる気がした。
そして、僕は―――サファイアのように青く澄んだ海に身も心さえも落としてゆくのだった。
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