453 / 713
ようこそ、【空中都・青春区・空海】へ⑤
「何を話しておるんだ、という顔をしておるな……よいか、ダイイチキュウから飛ばされてきた坊主よ……わいは、この失夢園にて夢を失った存在の保護、もしくは研究を行っておる……ドクターじゃというのに研究してんのかよという突っ込みはナシにしとくれよ?」
「し、失夢園……っ……!?」
それが、僕とドクターCという謎の人物が今いる場所の名前らしい。よくよく見てみれば、今正にフワフワと浮遊していて真上から間抜け面を晒してしまっている僕を覗き込んでくるドクターCの容貌も―――ダイイチキュウではお目にかかれないような奇怪なものだという事が今更ながらに気付いた。
とはいえ、服装はダイイチキュウにいた頃に病院で見た医者が着ているものと、ほとんど変わらない。唯一、ダイイチキュウにいた医者が着ているものと違う点は―――白衣のボタンが桃色のハート柄になっている事だけだ。
けれど、ドクターCの奇怪な点は服装よりも―――むしろ頭の部分にあるのだ。ドクターCの頭部へガブッとかぶり付いて飲み込もうとしているかのように―――おそらくかつては人間だった何者かの白骨化した頭髑髏があり、ドクターCもそれを異様と思う気など更々ないのか、訝しげに見つめてくる僕を逆に不思議そうに見つめ返してくる。
そのため、若干の気まずさを感じてしまった僕は近くにおいてある真四角の硝子ケースに目線を移してしまう。
「み、美々さん……っ……そんな……どうして……彼女が……ここに……っ……!?」
真四角の硝子ケースの中にゆら、ゆらと揺らめきながら泳ぐ人魚と化してしまった美々を見つけた僕は唖然としながら呟いてしまうのだった。
ともだちにシェアしよう!