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ようこそ、【空中都・青春区・空海】へ⑪

※※※ 場面は変わり、 ここは【空中都・青春区・空海1-0-22】__。 (こ、ここは海?いや、海だけじゃなくて……空もある?一体ここはどういう場所なんだろう……っ……) 唐突に__ふっ、と体が浮遊している感覚に襲われ、思わず固く閉じてしまっていた目を開けた時に飛び込んできた光景は正に【夢のよう】としか言い様がないくらいに幻想的で、ダイイチキュウにいた頃には目にした事すらないくらいに奇怪な景色だった。 ふよ、ふよと漂い続ける僕の真上にはアクアマリンのように透明度が高く――ザ、ザアと一定のリズムに合わせて波音を響かせている海が広がっている。ダイイチキュウにも海は存在していたが、普通であれば真下に存在するべき海が真上に広がる光景を目の当たりにするなんて思いもしなかった。 よくよく目を凝らして見てみると、赤・青・緑といった彩りの珊瑚や貝殻、そして熱帯魚やヒトデなどといったダイイチキュウでも水族館で一般的に目にしていた生物達が何処かから差し込んでくる光の反射によってキラ、キラと輝いている。 正直、不可解な場所に来てしまった___と思う事以上に余りにも幻想的な世界を目の当たりにしたせいで思わずボーッと見とれてしまう僕。 しかし___、 (あの光は、一体どこから差し込んでるんだろう……光なんて久しぶりに見た気がする……) 何でかは知らない。 でも、差し込んでくる光の事がどうしても気になった僕はふよ、ふよと体を漂わせたまま辺りへと目線を動かす。 光の正体を確認するべく目線を真下へと移した僕の目に飛び込んできた光景、それはダイイチキュウにいた頃に何度も見ている雨があがった次の日のような澄みわたっている青空なのだ。 しかも、ただ単に澄み渡る青空が幻想的な世界に魅了され呆然としている僕の目を刺激してくる訳じゃない。 (あれは車、それに看板や標識___学校みたいな建物、信号機、街路樹に街灯……ここにあるのは、ほとんどがダイイチキュウで暮らしていた時に見た事のあるものだ……海と空の位置は真逆でも何だかとても懐かしい……っ……) 真上に広がるは珊瑚や魚たちがが浮かび優雅に泳ぎ回る青い海___。 真下に広がるは車や街路樹や信号機といった無機物たちが漂い呆然とする僕に意図せずダイイチキュウで過ごした日々の懐かしさを訴えかけてくる青い空___。 ポタッ…………と涙が僕の頬を流れ落ちる。 そして、その涙は___無情にも真下に広がる青い海に吸い込まれ、突然の乱入者と共に僕の心を乱すこととなるのだった。

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