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人魚姫②

(いや……まずは知花の事よりも__美々さんの事を何とかして救わないと……っ……) 周りを【海】と【空】で囲まれ、ふよ、ふよと浮遊している体で何とか無理やり人魚姫にされてしまい怪しげな液体を注入され未だ眠りについたままの美々の元へと、バタ足で泳ぐかのようにして近付いた。こうしていると、ダイイチキュウにいた頃に体育の授業中に誠やクラスメイト達とワイワイ騒ぎながら水中で競争し合ったのを思い出す。 その時の誠は心の底から___やりたくなさそうな、面倒くさそうな表情を浮かべていた。それでもその後は何だかんだで一緒に競争に加わっていた___ぶっきらぼうだけど優しい誠。 (みんなに……早く、みんなに会いたいっ……ひとりぼっちは……怖い……っ……) 無意識の内に込み上げてくるひとりぼっちという不安に心を支配されながら【人魚姫】と化した美々に触れたからだろうか___。 僕が眠りについたままの【人魚姫】を覆う膜に触れた途端に異変が現れる。美々の目がカッと見開き【人魚姫】と化す前の美しい黒い目とは裏腹に――まるで死んだ魚のように濁りきった灰色の目で僕を見据えてくるのだ。 人魚と化す前まで可愛らしい笑顔で僕らと接してくれていた美々とは別人のよう。蛇みたいに鋭い眼光で、死んだ魚のように濁りきった灰色の目をまっすぐに向けてくる。いや、むしろ自分に触れるな――自分のテリトリーに踏み込んでくるなといわんばかりにギロリと睨み付けてくるのだ。 そして____、 【あ、ああ……っ……あぁぁぁー……帰り……たい……っ……あの……ひとがいる……あのころに……帰りたい……っ……大好きな……ひと……×××くん……】 ×××くん__きっと、それは僕がかつて出会い存在ごと消え去っていった学生服の少年のピエロの事なのだろう。美々は誰にもいえず__恋人であるピエロを失った苦しみを心の中に溜め込んでいたのだ。 それが、ついに今このタイミングで爆発してしまった。いや、【金野 力】や【アラクネ】__認めたくはないけれども【チカ】によって無理やり爆発させられてしまった。 【人魚姫】の哀しげな咆哮が【海】と【空】に囲まれた世界に轟く。 そして、やがて___その哀しげな咆哮は世界に異変をもたらす事となるのだ。

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