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人魚姫の側近との戦い①

【優太くん、人魚姫のご意思を受け入れるのか___受け入れないのか……ボクも誠__それにミスト達だってそれが聞きたいだけなんだ……ボクらと共にずっとこの夢現の世界で過ごすか――それとも塔の主と人魚姫に背き汚濁した現実の世界で味気ないガムみたいな日々を過ごすのか……ボクらは優太くんの口からそれを聞きたいんだよ】 偽物の【引田】が発光しているベタに見惚れている僕の体を優しく抱擁しながら問いかけてくる。少しふざけた調子の口調もダイイチキュウでクラスメイトとして共に過ごしてきた引田とソックリで――僕の心が揺らいでいるのが分かる。 どう見ても、その姿形は―――本物の引田や誠達とはかけ離れているというのに不安に押し潰されそうになってしまっている僕の心は――ずっとこの場所で人魚姫と化してしまった【美々】や姿形が本物とはかけ離れている仲間達と共に過ごしていくという《現実逃避》___つまりは楽に不安を解消する方法をとりたいという思いに囚われてしまいそうになっているのだ。 『優太___優太……ダメだよ……そんな事を考えちゃ……そんなの、優太じゃないよ……仲間思いで優しい優太じゃないよ……ぼくを___忘れちゃったの?』 夢現の世界である境界線___先程、【人魚姫】の口から発せられた心ノ壁とやらが壊れたせいで【真上の海の世界】も【真下の空の世界】も混ざり合っている。そのせいで辺り一面にダイイチキュウに存在していた学校の建物、灯りのついていない電灯、信号機やらが風に舞い勢いよく僕の体の真上や真下をぐる、ぐると目まぐるしく漂っている。 その中に___ラジオのような物体を見つけた。勢いよく吹いている風のせいで一瞬しか僕の目に映らなかったけれど、そのラジオのような物体からは―――僕を責めるような想太の懐かしい声が聞こえた。 その瞬間、僕は完全に目が覚めた。 そして、心の迷いも不安も吹っ切るように__周りに漂っている物へと目線を向ける。色々なものが強風に舞っていたが、その中で武器として使えそうな物がないかどうか目を皿のようにしてジーッと見渡した。 ふと、ある物を見つけた___。 ダイイチキュウにいた頃__美術の授業の時に僕が怖くて堪らなかったもの、それでいて尚且つ武器として使えそうなものを見つけたのだ。 彫刻刀___。 (大きくはないし___ミラージュに存在してる剣とかに比べれば殺傷力は劣るかもしれない……でも、多少はダメージを与えられるかも……っ……) そう思いつつ、目まぐるしく回転しながら水中を漂っている彫刻刀を何とか手にすると__そのまま僕の返答を待っているのか微動だにしていない偽物の【引田】へと勢いよくそれを投げつけるのだった。 家族である想太を救わないまま、偽物の仲間や美々と永遠に過ごすなんて味気ないガムを噛むような時を過ごすなんて……絶対に嫌だ___。

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