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人魚姫の側近との戦い⑦
【さあ、優太くん___君はこっちに来て人魚姫やホワリンと共に仲間の最後を見届けてるといいよ……人魚姫__ぼくがアイツらと遊んでる間、優太くんを頼むよ?】
パチンッ…………
偽物の【引田】が優越感を含んだ笑みを浮かべながら軽快に指を鳴らす。すると、またしても偽物の【ミスト】が真っ赤なヒレを発光させつつ___今度は辺りを回転しながら漂い続けてる所々黒く変色し錆び付いたコンクリート造りの建物に向けて勢いよく泡を吹き出した。そして、その泡が当たり__やがてシャボン玉のように弾け飛んだかと思うと、ついさっきまではコンクリート造りの古い建物の形だったとは思えないような思いがけないモノへと徐々に変化していく。
『バォォォ~ッ……オォォォ~……』
巨大な《法螺貝》へと変化し終えたコンクリート造りの建物が発する凄まじい音が鳴り響く。鼓膜が破れてしまうのではないかと思う程の爆音に思わず、両耳を塞いでしまった僕は__偽物の【引田】が何を思って《コンクリート造りの建物》をわざわざ《巨大な法螺貝》へと変化させたのか意図が読めず呆然とその様を見つめる事しか出来なかったのだけれど、ハッと我にかえり《コンクリート電柱の騎士達》に取り囲まれて僕と同じく身動きすら迂闊に取れない誠達を助ける為に彼らの元へと移動しようとする。
しかし、結果的にそれは上手くいかなかった。
《巨大な法螺貝》のぽっかりと開いてる大きな殻口に僕の体が吸い込まれ、すっぽりと体全体が埋まって今度こそ本当に身動きひとつ出来なくなってしまった。何度も、身を捩ってみても動くどころか___段々と体から力が抜けていって脱力感に襲われてしまう。
それどころか、動けば動く程に___体が痺れていくのが頭の中で分かり、悔しさを感じながらも為す術がなく《巨大な法螺貝》に閉じ込められてしまうのだ。
【法螺貝には毒がある___さあ、戦いを始めようじゃないか】
偽物の【引田】の意地悪い言葉も__体が痺れて頭の中もボーッとしている僕には碌に届かない。
「ゆ、優太……っ……この___優太を離せ……!!」
大事な誠の切羽詰まった声が微かに聞こえてくる___。しかし、今の僕には言葉を発する気力さえもない。
【それは無理な話だね……優太くんの身も心も___もう、僕らのモノ……いいや、人魚姫のモノだ】
パチンッ…………
再び、偽物の【引田】が指をひときわ大きく鳴らすと___僕の体は《巨大な法螺貝》の殻口から勢いよく吹き飛ばされ、やがて海月のように形を変えた人魚姫の黒い膜の触手によって体を捕らえられてしまうのだった。
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