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人魚姫の側近との戦い⑧
◆◆◆
誠は気が気でなかった___。
早く人魚姫の触手に捕らえられ、気絶している愛しい優太を助けに行かなくてはいけないとちうのに周りを《電柱の騎士》の大群に取り囲まれ__しかも、何とか狭い隙間から出ようと試みても透明な硝子が張られているかの如く外側に出られないのだ。
「こ、こいつら……ミストの攻撃魔法も__サンの弓矢の攻撃も……全然効いてないよ……っ……」
「いや、むしろ___それどころか……逆に力を増して我々の攻撃を利用している……なんという厄介なヤツらなんだ……」
ミストとサンが焦っている。
誠は彼らが焦りの表情を浮かべるのも無理はないと思った。確かに、彼らが言うとおり__魔法の攻撃や弓矢の攻撃は《電柱の騎士》の大群の胴体に当たる度に弾き返されてしまう。しかも、ただ単に弾き返されるだけでなく魔法や弓矢を射ったミストやサンに向かって追尾攻撃してくるのだ。元々はダイイチキュウに存在していた《電柱の騎士》には顔というものが存在しない。そのせいで、そもそも多少なりともダメージを与えられているのかさえ確実には判断しきれないのだ。
「い、いくらなんでも数が多すぎる……全部を相手してたら……ミストの魔力が切れちゃうよ……」
「問題はそこじゃないぞ……ミスト__コイツらの厄介な所は数の多さというのは同意だが……根本的な問題はヤツらに攻撃すればする程、我々にそれが返ってくる事だ___このままでは碌に攻撃さえ出来ずに全員水の泡となるしかない」
(確かに……ミストとサンの言う事も一理あるけど……まだ問題はある___それは仲間全員が揃っていない事だ……)
《電柱の騎士》の大群を消し去るには__絶対に何か方法がある筈だ。ダイイチキュウにいた頃、どんなに難関なゲームでも攻略本が存在していたように倒せない敵など存在しない筈だ。
碌に攻撃すら与えられず、苦戦中のミストやサンと共に《電柱の騎士》の大群の持つ刺々しくなった街路樹から容赦なく放たれる雷撃を無我夢中で避けながら誠は頭の中の考えを巡らせていく。
と、その時だった___。
必死で仲間達を守りながら攻撃に耐える誠の目に、ダイイチキュウで過ごしていた時に嫌という程に見慣れていた【歩行者用信号機】が飛び込んできたのは___。
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