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目覚めの時は近づいている②
「こ、これ___どうして三つもあるのかな?」
「優太、上を見てみろ……その答えはもう出ている。」
深刻そうな表情を浮かべて、どことなく焦っているような様子の誠の言葉を聞いてから僕は言うとおりに真上を見つめてみた。
《目覚まし時計》、《学校の校舎にかけられていた時計》、《街灯》の真上には巨大な氷柱が出来ていたのだ。いつの間に出来ていたのかと疑問に思う事よりも先に___ある問題点があるという事に気付く。
巨大な氷柱は非常に不安定で根元がグラグラと揺れており、今にもその鋭い先端が真上を見上げている僕らの方に落ちてきそうなのだ。
鋭い先端が突き刺されば串刺し状態となり__ひとたまりもないだろう。
(どうして、ここに三つのアイテムがあるか__わかった気がする……)
「ここから人魚姫の黒い膜を破るアイテムを一つだけ選らばなきゃいけないってこと__きっと、そういう事だよね……誠。正解のアイテムを選らばなきゃ___二人とも串刺しになる……慎重に選ばなくちゃ……」
「ああ……そして、優太……それはお前が選べ。大丈夫だ、もしもの時は俺が守ってやる。そのために___俺はここにいるんだ」
誠の言葉を聞き、僕は強く頷いた。
とはいえ、迷いもある___。
(でも、この中から一つだけ選べっていわれても……ここにある内の二つは目を覚まさせるアイテムだ……その中での正解……正しいもの……)
朝、学校に行く前に目を覚まさせてくれる《目覚まし時計》___。
朝と昼との境目の中で夢見心地から現実へと覚まさせてくれる《学校の校舎にかけられていた時計》___。
けれど、夕方から夜にかけて暗い道を照らす光りを放つ《街灯》だけは違う。その時、僕の頭にある懐かしい映像が思い浮かんだ。
それとは別に___先程、引田も言っていた。
希望に満ちた僕と誠に【人魚姫と化した美々】とホワリンを救うのを任せると___。
あの言葉は、引田が意図してはいないけれど結果的にヒントとなったのだ。僕は真上でグラグラと揺れている氷柱がふとした瞬間に落ちて来ないようにゆっくりと《街灯》のある場所へと移動する。
僕が選んだのは___《街灯》だった。
日中の授業が終わり、夕方の暗闇を照らす光を灯す《街灯》を僕は選んだ。暗闇を灯す希望の光を放つのは三つのアイテムの中では《街灯》しかない。
けれども、僕が《街灯》を選ぼうと決意した理由はそれだけじゃない。その外国風な造りの《街灯》は先程までは支柱から真っ二つに折れていたが僕が手に取ろうと徐々に近づいていくと、三つに別れた先端部分に光が灯っていったのだ。
かつてダイイチキュウに住んでいた頃に想太と共に見た《人魚姫》の絵本で見た【トライデント】という武器に形がよく似ていた。
僕はチェスのキングの駒に似ている《街灯》の支柱部分を強く握り込む。
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