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~人魚姫の少女と白兎の縫いぐるみが目覚める時~

ドスッ…………と音はしないものの___僕は手に持った外国風の《街灯》を勢いよく海月型の黒い膜へと投げる。その際、黒い膜に覆われていて体内に取り込まれながら眠っている【人魚姫】と化した美々や綿菓子のような兎の縫いぐるみと化したホワリンに当たらないように慎重に狙いを定めて投げた。 すると、再び辺り一面に凄まじい風が吹き荒れて___先程、僕らを串刺しにしようとしていた巨大な氷柱と共に周りに漂っていた建物やアイテムをも巻き込んでのみ込んでいく。 やがて、黒い膜がシャボン玉のように__あるいは針を突き刺した風船のように弾けて破けた。そして、その途端に破けた黒い膜の部分がまるで掃除機のように周りを漂う建物やらアイテムやらを徐々に吸い込んでいってしまう。 僕と誠は咄嗟にまだ吸い込まれてしない建物の残骸へとしがみついた。もちろん、黒い膜が破けてから少しして元の少女の姿と背中に赤い目が生えてる白い兎のような生物に戻ったホワリンを必死で抱え込みながら。 「ん……っ……こ、ここは……!?」 「よかった、美々さん___目覚めたんだね!?」 「わ、私……今まで何をして___それより皆さんは何処に……っ……」 「優太___その話は後にしろ!!おそらく、このまま此処にいると……俺たちまでこの嵐に巻き込まれてあの黒い膜の中に閉じ込められてしまう……っ……早く___ミスト達の元にもどろう!!」 ◆◆◆ その後、無我夢中で僕らはミスト達がいる筈の場所へと戻ってきた。しかし、その途端に僕らは今までとは違うミスト達の姿を見て呆然としてしまった。 ミストもサンも___そして、引田もライムスも全員が親指程の大きさになっている。つまり、小さくなっているのだ。 (何で……みんな小さくなったんだろう……) と、疑問に思ったものの___すぐにその理由が分かった。 「ああ~……もう、やっと来たのであるあるですか!?マ・アは待ちくたびれたのであるあるですよ!!さあ、ニンゲンのオス二人とメス一人……それに訳の分からない白い生き物一匹__早くコレを飲むのであるある!!」 白と黒の鱗に覆われた小学生くらいの女の子(容姿はダイイチキュウの人間とよく似ている)が背中に背負った黒いランドセルを下ろすと、急いで中からゴソゴソと小瓶を何個か取り出し唐突な状況に陥ったせいで呆然とする僕らの前に差し出してきた。赤と青の液体が小瓶の中でゆらゆらと揺れつつ混じり合っている。 「おい……せーの、で一斉に飲むぞ!!美々……それにホワリンもだ。ミン魚__お前を信じてるぞ……いくぞ、せーの……っ……」 ごくんっ…………!! 一斉に喉を鳴らしつつ怪しげな液体を飲み干した直後、僕と誠___それと美々とホワリンの体も一気に親指程のサイズへと変化する。 「さあ……死と始まりの塔にいるドクターCの元に帰るのであるあるです!!狭いかもですが、我慢してくださいなのなのですよ!!」 マ・アの嬉々とした声が聞こえ___僕の目に暗闇が飛び込んでくるのだった。

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