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Ψ休戦Ψ
「あ、あの___リーダーさんや美々さん達は……これからどうするんですか?僕らは……まだ救わなきゃいけない仲間がいるので、あの開いた扉の中に進みますけど……」
僕は先程までは固く閉じられていたものの、不意にガチャンと音を立てて開いた扉へチラリと目線をやりつつ、隣で少しだけ酔っぱらったのか頬を赤らめているリーダーへと尋ねてみた。
開いた扉の隙間から眩い陽光が差し込んでいるのが___いかにも怪しい。この塔の支配者てある【金野 力】という男や側近のアラクネにおちょくられているような気がして僅かに悔しさを抱くものの、ナギや想太――それに親友の知花を救うためにはこのまま先に進むしかないのだ。
「それなんだけれど……実は、先程__キミらが眠りについてた間に蜘蛛の化け物が俺達の前に姿を現して……俺や美々を含めてこの場に連れて来られたキミら以外の皆をダイイチキュウとやらに帰還させてやる、と言っていたんだ……あそこに垂れ下がる一本の金糸を辿って登っていけば戻れるとも言っていた……だから、キミらには申し訳ないけれど__俺達はダイイチキュウという古里に戻ろうと思ってる……今まで……ありがとう」
「僕らこそ……リーダーさんや美々さん__それに他の人達と過ごしたこの一時を絶対に忘れはしません。今まで、本当にありがとうございました……ダイイチキュウでもお元気で幸せに過ごしてください……あと、繊細な美々さんの事……リーダーさんが幸せにしてあげてください……彼女もきっとそれを望んでる筈です」
しみじみとしたリーダーの言葉を聞いて、別れに寂しさを思いながら彼から手渡された小瓶の中に入っている白い酒を思いきって飲み干した。ダイイチキュウでは未成年だったから酒なんて飲んではいなかったためお酒の味はよくは知らない。
だけど___別れの夜に飲み干したその白い酒は、とてもしょっぱい味がした。
そして、リーダー含め美々さん___それに他の人々は僕らに見送られながら涙を流し中には嗚咽を洩らしながら、天から垂れ下がる金糸を辿って順々にダイイチキュウへと戻っていくのだった。
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