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ようこそ、【ウミス・ノナ】へ①

※ ※ ※ キィ、と扉を開いて眩い光の中で___ひたすら僕ら一行は歩き続ける。 歩いている最中――微かに周囲からクスクスと悪戯っぽく複数の何か(生き物かは見えないので分からない)が笑っている声が耳を刺激し、ダイイチキュウにいた時には憂鬱だと感じていた雨の日の独特な匂いが鼻を刺激してくる。 だんだんと、眩い陽光は翳っていき――さっきまでは碌に確認しきれなかった周囲の景色がハッキリと僕ら一行の目に飛び込んでくる。 先程よりは眩しくはないとはいえ、陽光が真上から降り注ぎ、周囲を覆い尽くす緑の木々らを生き生きとさせている。中には、自ら踊り出して幹や枝を振っているものもいた。どうやら、この場では木々にも命が与えられているらしい。 いつ降ったかは僕らは知らないけれども雨によって生い茂る葉に溜まった露が、自ら踊り出して枝や幹を振りつつ踊り出した木々によって、どんどん真下へと降り注がれていく。 耳ながフェアリーは露のシャワーを浴びて、尚一層クスクスと陽気に頬笑んだ。 フェアリーが色鮮やかなガラスのように透明で少し動く度にハラハラ舞い落ちる花の上に横たわりつつ、よそ者といえる僕ら一行を見て口元に笑みを浮かべながら仲間達と笑い合っている。中には、口をすぼめつつガラスみたいに儚い透明な花びらをどこまで飛ばせるか勝負し合って楽しげにはしゃいでいる耳ながフェアリー達もいる。彼女らは互いに葉っぱを側に置いて、勝負に負けてしょげている方がもう片方のフェアリーへと己の側に置いてあった葉っぱを渡す。 まるで、ダイイチキュウにいた時の賭け事のような光景だ__。 【ニン……ゲン……三個……きゃはは……エルフ……エルフ……スライム……おいしそう……おいし……そう……】 仲間同士で笑い合うフェアリーの言葉を無視しつつ、僕らは先へ先へと歩んでいく。 「見て……っ……また扉があるよ!!でも、なんて書いてあるのか分からないや……ユウタ、これ___何て書いてあるか分かる!?」 「えっと……鬱病患者――R・Kの……カルテ?症状【妄想性ウミス・ノナ】??」 「一体……それは……っ……何の事だ!?」 僕がミストに尋ねられ、言われた通りに新たに現れた扉に書かれたダイイチキュウの文字を読み上げると隣にいるサンが訝しげに顔を歪めながら呟いた。彼が怪訝そうなのも無理はない。実際に口にした僕ですら――そして同じダイイチキュウから連れて来られた誠や引田ですら、その言葉が扉に書かれている意味が分からないからだ。 と、その時だった___。 今まで固く閉じられていた筈の扉が唐突に外側から勢いよく開いて、またしても目を覆っていなければ我慢ならない程に強烈な白い光が襲ってきたのだ。そして、その途端に先程まで自然に満ち溢れて陽気な気配に包まれていた道中の世界に異変が起きた。 クスクスと楽しげに笑い合っていたフェアリー達も、命を与えられて自ら幹や枝を動かしつつ陽気に踊っていた木々も、緑の葉に覆われた他の木々も___不意に扉が開いた途端に全てが枯れ果て砂となりボロ、ボロと崩れ落ちていく。 そんな中で、僕の顔に___何か小さな生き物が当たった。あまりに突然で、それが何という事を確認する前に僕らは急いで開かれた扉の中へと駆けて行くのだった。

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