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ようこそ、【ウミス・ノナ】へ②

唐突に開いた扉の先には__砂だらけの町が広がっていた。空は夕暮れで、夕日に染まっているせいか赤紫色に染まっている。 けれど、夕暮れとはいえ太陽の光はギラギラと僕ら一行を照らしていて瞬時に汗だくになるくらいに強烈な暑さが襲ってくる。そして、僕の顔には___ついさっき、襲ってきた小さな何かが張り付いたままだ。ただでさえ、この場所に来てからというもの異常な暑さからくる不快さに襲われていたというのに__その小さな何か(やっぱり生き物だ)が顔に張り付いているせいで余計に増幅してしまう。 しかも、その生き物の足らしき場所に小さな薔薇の刺のようなものが生えているせいで針に刺されているようなチクリとした痛みが襲ってくるのだ。たまらなく、僕は急いでその生き物を顔から引き剥がした。 「いっ……たぁ……な、何これ……っ!?」 「ユ、ユウタ……それ___ちょっと見せて!!」 ふいに、いつもは割と冷静なミストが嬉々とした声色で言ってきたため僕の手のひらの中で獰猛に動き回っていたその生き物を仲間達にも見せる。ダイイチキュウの__コオロギに見た目はよく似ている。 けれど、ダイイチキュウのそれとは違ってとても獰猛な気がする。よくよく見れば、鋭いギザギザのノコギリのような牙が口内をビッシリと埋め尽くす程に生えていて、頭部に生えている日本の銀色の触手はダイイチキュウのものよりも数倍は太くて先端が鋭い。胴体は黒くヌメヌメと光沢を帯びており、黄金色の足には刺が生えている他にはこれといった特徴は見当たらないようだ。 「こ、これ……っ……ミラージュで買い取り額が高価すぎる珍品として有名な魔法材料だよ!!ええっとね、確か名前は__《ケ・ワライカナガワ》だったかな……とにかく……ミストはずーっとコレが欲しかったんだ!!」 「ミスト……それよりも___優太くんの顔の怪我を心配した方が良いんじゃないかな??それと、ここに来た途端に感じてる……この異様な暑さもね。なんか、ここ――おかしいよ……まか、とにかく優太くんの怪我を治せるアイテムか何か……あっ……ここに包帯が落ちてるじゃないか……っ……」 僕の手のひらから《ケ・ワライカナガワ》を受け取ると、それを目を輝かせながら、あらかじめ持っていた小瓶の中へ大事に大事に仕舞うミストへと引田が言う。 その後、ギラギラと照りつけている夕日の光を一心に受けて黄金色に煌めく砂の山に埋もれ掛けた包帯を引田が掴もうとした時だ。 ひら、ひらと僅かな風に揺らめいていた包帯が――意思を持ったかのように伸ばした引田の手首に巻き付いてぐいっと砂山の中へと引き摺り込んでしまったのは___。

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