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ようこそ、【ウミス・ノナ】へ④
「なーんだ……堅物エルフさんが……ぼくの事を抱き止めてくれたんだぁ……どうせなら__優太くんの腕の中が良かったのに……」
「__黙れ。もう一度、砂の中に埋められたくなかったら……その生意気な口を閉じて、私の腕に抱かれてろ」
小型のマミーが消え去って、再びぐったりとしていた引田が砂山へと落ちそうになるギリギリの所で慌てて駆け寄ったサンの両腕が引田の体を抱き止める。勿論、サンも砂山の中に引き摺り込まれないように細心の注意を払っていたため結果的にサンによって引田は助けられた。
そして、サンと引田らしい意地っぱりな会話を交わしながら二人は無事に僕らの元へと戻ってきた。
ギラギラと真上に照りつける太陽の光がゆっくりと__けれども、確実に僕らの体力を奪っていく。僕や誠、それにヒキタは勿論のこと__エルフであるサンやミストさえも顔に汗が吹き出している。おそらくはエルフにとってもダイイチキュウで暮らしていた人間と同じように、この異様な程にしつこい暑さには耐えきれないのだろう。
真上から容赦なく照り続ける太陽から生み出された黒々とした影は__僕ら一行にピッタリとくっつくように張り付いているけれども、二体のマミーには存在していない。それが余計に不気味さを増幅させるのだ。
シャッ…………
「あ、危ないっ……ユウタ__まったくボーッとしてないでよ!!今は戦闘中なんだよ……少しはしっかりして……っ……」
「ご、ごめん……ミスト___」
確かに僕は油断していた。
ミストが言う通り異常なまでの暑さのせいで、頭の中がボーッとしていたのもその通りなのだけれど、いつもとは違って僅かにピリピリとした様子で僕へと言い放ってきたミストの態度に驚きを隠せず思わず目を丸くしつつ彼に謝った。
「だ、駄目だ__さっきの小型のマミーと違って……ミストの水魔法が効かない……かといってミストの魔法階級じゃ火の魔法は使えないし……どうしたら……っ……」
「なんだ……ミストにだって火の魔法は使えないっていう弱点があるんじゃないか。それを棚にあげて僕にばかり説教して___いつも、いつも偉そうに……っ……」
無意識の内に、ミストに対して悪態をついてしまう。しかも、二体のマミーから放たれた鞭のようにしなる包帯の打撃攻撃を喰らわないように何とか庇ってくれた恩人ともいえるミストに対してだ。
ギラギラと照りつけている砂漠特有の暑さによる汗ではなく、大切な仲間に対して悪態をついてしまうという異様な行動をとってしまったせいで冷や汗が流れるような感覚に陥ってしまう。
「……っ…………」
(ごめん……ミスト___こんな事を言うつもりじゃなかったんだ)
そう言いたいのに、何故か言葉が出て来ない。
その内に、ミストは悲しそうな__それでいて怒りを込めた表情を浮かべつつ何も言い出せない僕をジッと見つめる。
「優太もミイラも___今は喧嘩している場合じゃないだろ……あのマミーとかいうミイラを何とかしなくちゃ先に進めないぞ」
「それについては、ぼくにひとつ考えがあるんだ。ミストが火の魔法を使えない以上、こうするしかない。それにしても、魔法が得意で何でも出来るミストにも弱点ってあるんだね。何だか、安心したよ。だからさ……自信を持ちなよ、ミスト___さっきの優太くんの言葉だって絶対に彼の本心じゃない。それでね、ぼくの作戦っていうのは___」
引田が皆を集めて、二体のマミーに気付かれないようにゴニョゴニョと耳打ちする。どうやら、二体のマミーが己の体にグルグルと巻き付いている包帯を鞭のように動かす打撃攻撃は一度打つと、次の攻撃を仕掛けるまで僅かに時間を要するらしい。
その隙に、引田は皆を集めて作戦について提案してくる。その時、引田の手にはダイイチキュウの子供が虫取りに行く時に持っていくような手持ちルーペが握られているのだった。
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