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ようこそ、【ウミス・ノナ】へ⑤

◆◆◆ 「それにしても___まさか引田が砂山に引き摺り込まれた時に、敵のマミーに気付かれないようにして手持ちルーペを盗んだなんて思いも寄らなかったよ……」 「さすがは、ずる賢さだけが得意のヒキタだけはあるな……まあ、結果として二体のマミーを倒す事が出来たのだから上出来だ」 ミストとサンの言う通りだ___。 結果的に引田が懐から出した手持ちルーペを使ってマミーらを倒す事が出来たのは、引田の機転の良さからくる作戦のお陰だったからだ。 ミストは火の魔法が使えないという弱点はあるものの、物を大きくしたり小さくしたりする魔法は唱える事が出来る。ある程度の魔力は必要との事だが、運が良かったのは、念のためにミストが魔力を充分に蓄積させていた事だ。 手持ちルーペを元の数倍大きくし、それを行なった上で、ギラギラと照りつける太陽とルーペのレンズとが反射する場所まで、マミー達に気付かれないようにしながら何とか誘導した。 そして、最終的には___太陽の光をルーペのレンズで反射させる事により火を起こしたのだ。手持ちルーペを大きくしたのは「その方が、火の勢いが増しそうだったし……」とマミー達を焼いた後にしれっと引田が言っていたのだけれど__その目論見どおり上手くいき、燃え尽きて砂のような灰と化した二体のマミーらは元の住みかである砂山に再び埋もれていき、その後しばらくしても僕らの元に出てきて襲いかかってくる事は無かった。 ◆◆◆ そして、またしても炎天下の中、僕らは見渡す限り360度__砂に囲まれている風景を目の当たりにして同じ景色が延々と続く憂鬱さと、異常な程の熱気からくる憂鬱さで心の中に不安を抱きつつも再び先へと歩みを進めて行くのだった。 しつこいくらいに一行を照らし続ける灼熱の太陽は__苦しむ僕らを嘲笑うかのように黒い影を生み続ける。

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