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異様な熱気に包まれながら僕ら一行は砂の神殿に辿り着く①
※ ※ ※
「まったく__いったい何時になったら……景色に変化が起こるのだ!?あれから無闇に歩いているが、本当にこちらで合ってるんだろうな__ミスト?」
「そんなの、いちいちミストに聞かないでよ……本当にサンってば昔っから嫌味ったらしい所があるんだから。ミストや能天気なナギじゃなかったら__サンとは接してすらいなかったかもよ」
「な、何だと!?」
顔中汗だくになり、ポタポタと頬を流れつつ砂地に僅かな量とはいえ水溜まりを作りながら___少し余裕がなさげな口調でサンとミストがやり取りする会話の内容が聞こえてきた。
と、炎天下の最中ひたすら砂山に囲まれた風景を歩き続けている僕ら一行。先程から薄々は感じていたものの___異様な熱気に包まれているこの砂山の世界は僕らから冷静さと柔和さを奪っている気がする。
(みんな暑さでイライラしているの気がする……そういえば僕もさっき意図せずにミストへ悪口じみた言葉を言ってしまった……)
自分自身への反省の意味を込めて、心の中で呟いた僕はふと水分補給をするためにカバンの中から水の入った入れ物を取り出そうとした。
足が鉛のように重く、汗が顔から滝のように溢れ出す。ダイイチキュウにいた頃に一時的とはいえスポーツをやっていた引田以外の面々は皆暑さに参ってしまったといわんばかりに、足取りが普段よりも数倍は遅くなり__口調が刺々しくなり口数も少なくなっている。
「みんな、少し休憩しようよ。はい、これ……回し飲みしていこう」
「ユウタ……これ水の入ってる入れ物じゃないけど……暑さで参ってるとはいえ……リーダーなんだからしっかりしてよ」
「えっ…………!?」
はあ、と呆れたような表情を浮かべつつ入れ物を返そうとしてくるミストから受け取ろうとした時、
ドサッ…………
容赦なく照らしつけてくる太陽の威力のせいか、そのせいで頭がボーッとしているせいか、はたまた単なる僕の見間違いのせいかは断言出来ないけども入れ物を砂地へと落としてしまった。
確かに、ミストが言う通り___それはダイイチキュウにいた頃に見た事があるコオロギの容姿に酷似した高価な生き物を入れていた入れ物だったのだ。
「……あっ……ま、待ってよ___待ってったら……!!」
「お、おい……っ……何処に行くつもりだ……ミスト__勝手な行動は止めておくんだ……っ……」
「そ、そんなの嫌だよっ……せっかく、長年探してきたあの高価な生き物を手に入れられたんだ。こんなチャンス……みすみす逃すなんてミストには出来ない!!」
どうやったかは分からないけれど、いつの間にかガラスの入れ物から逃れてちょこまかと動く【コオロギみたいな高価な生き物】をミストが慌てて追いかけていく。
どことなくギラギラとした目付きをしながらそれを追いかけていくミストを見て、僕だけじゃなくサンや誠__それに引田やライムス(中に取り込まれて暑さから逃れているホワリンもだ)までもが訝しそうにしていたものの仲間を見捨てる訳にはいかず、【コオロギみたいな高価な生き物】をミストの後ろからライムス(ホワリン)を除く各々は鉛のように重くなった足をむち打ちつつ追いかけて行くのだった。
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