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異様な熱気に包まれながら僕ら一行は砂の神殿に辿り着く③

◆◆◆ 「申し遅れました____我らは王となりうるべきであった御方の魂を天へ届けるべく儀式を行なう者……今、まさに王となりうるべきだった御方の魂を天に届ける儀式《神捧式》を行なっておりました。我の名はベニーオ___旧王と次に新たな王となる者の母であり、新王を支える女神ともなる存在……お客人__どうかお見知りおきを……」 「…………」 頭をすっぽりと覆い尽くす犬の面を被り、腰まである艶やかな髪を靡かせる女性(ベニーオというらしい)は此方に敵意など一切見せていない穏やかな声で僕ら一行へと話しかけてきた。 彼女の傍らにいるワニの面を被っている男性は無言のまま彼女の言葉に同意するかのように一度此方へとお辞儀してきた。深々とお辞儀をするその男性の姿を見て、僕は一瞬ダイイチキュウにいたサラリーマンの人々の姿を頭の中に思い浮かべてしまう。 もちろん、彼の頭に被っている面もベニーオと名乗った女の人と同じように頭をすっぽりと覆い尽くしているため顔や表情は伺えないのだけれど、布一枚さえ纏わず無防備ともいえる浅黒い肌の上半身は、ダイイチキュウの人間の男の人と同じように胸が平らになっているため声色や顔付きが分からずとも男性だと判断したのだ。 結論からいえば、僕ら一行は__ベニーオや名乗りさえしなかったワニ面の男性の言葉に甘えて《神殿》へと招待される事にしたのだ。このまま、無闇やたらに歩き続けるよりは《金野 力やアラクネの居場所》について何か手掛かりが得られるかもしれないこの現状をみすみす逃がす訳にはいかないと話し合ったし、それにミストが執着しきっている《コオロギによく似た高価な生き物》が___まるで、さも当然だといわんばかりにベニーオに向かって飛び込んでなついてしまったのだ。 「あ、あの___そこの棺に眠っているのが……王となりうるべき御方……とやらなのですか?もし、よければ__その御方とやらを一目見てみたいのですが……っ……」 なぜ、そんな言葉を僕が口走ったのか__正確な事は分からない。隣にいる誠や引田がギョッとして僕を怪訝そうに見つめている。ただ、ひとつ言えるのは何故かその《王となりうるべきだった御方》とやらの姿を見なければいけないと__得たいの知れない何かが僕の心に訴えかけてくるように胸がザワついているからだ。 「これも……何かのご縁___普段であれば絶対にお見せしないのですが……特別なあなた方にならば、王となるべきだった御方の魂も喜びに打ちひしがれるでしょう……さあ、ご覧下さいませ……」 「…………」 ベニーオが傍らにいるワニ面の男に何かを耳打ちするように顔を近付けた。さすがに何を言い付けたのかまでは距離的に分からなかったけれども、無言ですぐに頷いた様子から察するに___ワニ面の男はベニーオに忠実で彼女よりも下の地位にいるようだ。 ガコッ……… 棺が、ゆっくりと開かれる___。

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