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異様な熱気に包まれながら僕ら一行は砂の神殿に辿り着く⑤

扉が完全に開き、一歩踏み出そうとした僕だったが___ふと、砂の神殿の入り口に堂々と佇む、ある物が視界に入ってきたため思わず上を見上げてしまった。僕らの数倍は大きなそれは__龍の形の砂像だ。まるで訪れた客人を値踏みするかのように、巨大な龍の砂像の目が砂の神殿に入ろうとしていた僕ら一行の方へと向いている。 「あ、あれは……っ……」 「ああ、あれは___これから新たなる王となる者の権威を称えるために新たに下僕に作らせた物です。あちらをご覧くださいませ。かつての王となるべき筈だった者の権威を称えて作らせた砂像は……脆くも崩れ去りました。そのため、あちらの《対なる神殿》には……もう誰もおりはしませんの……まあ、それももはやあなた方には関係なきこと……さあ、中へ___」 よくよく見てみれば、今___僕らが前にしている砂の神殿から少し離れた場所にも二等辺三角形をした同じ形の《砂の神殿》がもう一つ建っているのが分かる。二つの《砂の神殿》は二等辺三角形という形や、地上から見た建物の高さ___入り口の場所など見た目に殆ど違いはないものの、唯一《扉の前に設置された砂像》だけ違っていた。 少し離れた場所にある《対なる砂の神殿》とやらの入り口の扉の前には、巨大な事には変わりないが___龍ではなくトカゲの砂像が佇んでいる。しかし、太陽の光を浴びてキラキラと黄金色に輝いている《龍の砂像》と違って《トカゲの砂像》は風が吹く度にサラ、サラと刻一刻と風化していっている。 その事を心の片隅で気にしつつも、このまま立ち止まったままでは埒があかないと思った僕はベニーオとワニ面の男性達の後に続いて__《龍の砂像がそびえたつ砂の神殿》の内部へと歩みを進めて行くのだった。

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