496 / 713

ライバル同士は異変に気付き策を練る①

◆◆◆ ____時は少し前に遡る。 ベニーオとワニ面の男の後を着いていき、王国の山が一面を覆い尽くす豪華絢爛な宴の間に通され、その直後に乾杯をした時のことだ。 引田と誠は共にベニーオやワニ面の男___それにベニーオ達に付き従う動物面を被っている者達に対して疑心を抱いていた。少し前までは、優太を巡って互いに嫌い合っていた彼らだったけども____実は性格面でよく似ている部分がある。彼ら自身はライバル同士としてその事を決して認めたくはないだろうが、妙に《心配性かつ何事にも疑り深い》所があるのだ。 だからこそ、彼らは宴に酔いしれている仲間達や__もちろん、疑っている張本人であるベニーオやワニ面の男らに決して気付かれないように注意深くアイコンタクトを取った。 『乾杯の合図は合わせろ___だけど、決して盃に入った透明な液体を飲み込むな……飲んだ振りをしろ』 言葉には出さないものの、疑心暗鬼となっているのは引田も誠も同じで、それと同時に狂宴の虜となり操られて雰囲気に飲まれている仲間達を何とかして救いたいと願っているのも__また同じなのだった。 敵に操られ一時とはいえ、このように言いたくはないが信用出来ない仲間達や卑怯な敵達に気付かれないように、僅かな音でさえも立てないように____そろ、そろと二人で宴の間から出て行った。 しかし、それを敵達が見逃す筈もなく__四つの黄金の瞳が険しく宴の間から出て行く引田と誠の姿を見つめるのだった。 ◆◆◆ 一方、引田は仲間を救うべく手掛かりに__確信、とはいえずとも一つ心当たりがあり誠と共にある場所へと駆けて行く。 それは、一風変わった壁画が描かれている長い廊下の、とある場所だった。 ベニーオとワニ面の男__それに取り巻き達に導かれて黄金が積み上げられている宴の間に着く前に、この廊下を通った時から既に引田は、とある壁画に強烈な興味深さを抱いていた。 引田の心を鷲掴みした一風変わった壁画には、左右に二等辺三角形が描かれており、その周囲には【鼠】【牛】【馬】などといった動物が横向きに描かれている。 何故、この壁画に心を鷲掴みされる程の興味深さを抱いたのかは明確には分からないし説明しようもない。 それにも関わらず、引田は何となくその一風変わった壁画に途徹もなく興味を抱き、忘れまいと必死で目に焼き付けてから皆と共に宴の間に入って行ったのだった。

ともだちにシェアしよう!