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ライバル同士は異変に気付き策を練る③

すぐに引田は己の考えが正解なのかを確かめるべく行動に移す。引田の頭の中には、今__主に二つの閃きが支配していた。 ひとつは【壁画そのものに何らかの仕掛けがあるのではないか】という閃きで、かつて引きこもりだった時に大好きだった《ドラン・クエスト》というRPGゲームのダンジョンエリアで苦労させられた記憶から着想を得たものだ。そのゲームのダンジョンエリアは例えば地面のある部分を踏んだら石壁の隙間から矢や毒煙が吹き出したりする等___様々な仕掛けやトラップがダンジョン内部に存在していて無我夢中でプレイヤーに攻略させるという魅力の詰まったゲームだった。 そして、もうひとつの閃きは【目の前の壁画に描かれているモチーフは古代エジプトの死者の書の一部《死者の裁判》なのではないか】ということだ。右側の二等辺三角形(天秤)に羽が置かれていない点や、天秤を囲うようにして動物らがいるなど――細部に違う所はあるものの___おそらく、この壁画が敵によって操られてしまっている仲間を救う鍵となるのではないかと考えたのだ。 (もしも―――あのゲームみたいにこの壁画自体に仕掛けがあるとするのなら……多分、この部分をどうにかすればいいはず……) 引田は目線を左側の二等辺三角形(天秤)に置かれている死者の心臓と、それをジーッと見つめている横向きの動物らに動かすと__古代エジプト独特の【永遠の命を求めたが故の来世観】に注目しつつ、同時に何故この二等辺三角形(天秤)を取り囲む動物らがいるのかという事に着目しながら壁画自体に仕掛けられているであろうトラップを探すべく___壁画のあちこちを見たり、触ったりするのだった。 ◆◆◆ 少し時間が経ってしまった___。 あれから、壁画の四方八方を手で押したりしている内に引田は天秤を取り囲む動物らの箇所が力を込めて押す事により、パズルのピースのように一旦取り外せる事と位置を動かせる事に気付いた。 そして、誠と共に頭を捻りながら考えを話し合える状況に追い詰められたものの、やがて右側の二等辺三角形の天秤の上の部分も二人で強力し合って力強く押し込む事により、窪みが出来たという状態を導き出せたのだ。 一人ではなく二人であったから、この今の状態を導き出せたといっても過言ではない。かつて、ライバル同士だった引田と誠の中に__もはや【嫉妬や劣等感__怒り】等といった負の感情は存在していない。 ただ、ただ敵に操られてしまって【快楽】という欲望に骨抜きにされてしまっている仲間達を救いたい、という共通の願いが___彼らの動力源となっている。 「ええっと……古代エジプトでは死者の真実を語って天秤が釣り合えば、オシリス神と同化して永遠の楽園アアルにて暮らすことが出来るっていう変な考えを持っていたから___うーんと、つまり……っ……」 「つまりは___地に着きそうなくらいに極端に傾いていて窪みのある天秤が、この死者の心臓が乗っている方の天秤と釣り合ってはならない――この動物らの中から死者の心臓よりも軽い存在を選べ――と、そういう事か?もしも重いものを選んで天秤同士が釣り合えば……この砂の神殿と同化してしまいオシリス神とやらに永遠の楽園に強制的に連れられて行ってしまう___そういう事で合っているな、引田?」 「ふ、ふん……木下誠にしては___冴えてるじゃん!!」 どことなく、満足そうな笑みを浮かべつつ引田は強く頷くのだった。

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