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ライバル同士は異変に気付き策を練る④
「おい___とりあえず、この窪みの上に心臓よりも軽い動物を嵌め込めばいいのは分かった……だけど、もしも失敗したら__どうするんだ?まさか、選べるのは一度きり――なんてことはないよな?」
「それは、大丈夫だよ――木下誠。この壁画は死者を楽園に導くための……いわば最後の時の裁判ともいえる。裁判は公平なものでなくちゃならないから、それを受ける僕らにとっても公平なものであるはず__いくらなんでも選択肢が一度きりなんて事はないと思う。それに、この壁画の中にもそれを裏付ける文字が描かれてるよ__ほら、これ見てみなよ」
【ωЭε】
トン、と引田が壁画の一部を拳でつつく。
訳の分からない記号のような文字が描かれているだけで、誠にはそれが何を意味しているのかピンと来ない。すると、少しだけ呆れたような表情を浮かべつつ今度は天秤の中央にいてすべてを悟っているかのように真ん中にいて辺りを見下ろしている《オシリス神》の頭上に描かれた太陽を指差す。
「太陽は___古代エジプト人にとってとても重要な存在。つまり、この太陽の中心に描かれているこの訳の分からない記号みたいな文字も重要だってこと――木下誠、お前にはこれが数字に見えて来ないの?」
「____す、数字……っ……!?」
引田から若干偉そうに言い放たれた誠は一抹の悔しさを抱きつつ、真正面だけではなく、あらゆる角度から太陽の中心に描かれている記号のような文字を観察してみるのだった。
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