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仲間全員で脱出するためにライバル同士は奮闘する①

◆ ◆ ◆ あれから引田と誠は砂の神殿から脱出するための鍵となる物をあちこち探してみたものの、どれもこれも窪みの開いた方の天秤の壁画には当て嵌まらず、大きな壁にぶち当たってしまった。 他に手掛かりがないかと辺りをぐるり、と見渡してみても黄金のコインが積み上げられた山が幾つもあるばかりで一向に光が見えてこない。そもそも、窪みは正四角形だけれどもコインは太陽のように丸いので確実に違うと断言出来る。 こうしてぐずぐずしている間にも、仲間達が敵の脅威に曝されていると危機感を抱いた引田は思いきって、まだ探しきれていない場所に何か手掛かりがないかどうか、もう一度確認するべく少し離れた場所を捜索するのを諦めて【窪み】のある天秤が描かれた壁画の前まで戻ってきた。 (パッと見ただけでは___単なる窪みだけど……もしかすると中に何か手掛かりがあるかもしれない……これだけはしたくなかったけど__優太くんや、ミスト……それに――あの堅物エルフを救うためだ……っ……今のぼくなら何だって出来る……) すう、と深く息を吸って大きく吐いた引田は正四角形の窪みの中に手を突っ込んだ。引田がここまで意を決したその理由は、先ほど壁画の隙間で蠢いていた【白煙を纏っていたスカラベ】がまだいるかもしれない、と危惧しているからだ。 と、そんな時____引田の手に固い物が当たった。それを掴み取るべく指を必死で動かしていたのだが、なかなか難しい。気のせいかもしれないが___引田にはそれが掴まれまいと自ら動いているように思えたのだ。 「よし……掴まえた……っ……!!」 ようやく、自らの手に収まったそれを確認しようと引田は窪みの中から手を引っ込める。そして、内心ではおそるおそる手を開くと___そこには口に何かを咥えている【虫】がいて懸命に手足を動かしているのが分かる。 「_____っ……!?」 声にならない悲鳴をあげながら、咄嗟に【虫】を放り投げて容赦なく踏みつけようとしていた引田を慌てて誠が止める。 そんな誠を不満ありげに睨み付ける引田___。 「ち、ちょっと、木下誠……何で止めるんだ!?こいつは、ぼくらを廃人にしようとした敵だよ……っ……」 「引田、お前――少し落ち着けよ。こいつは先ほどのスカラベとやらじゃない……よく見てみろ。これには触覚がある、それに……体の形も違う。砂の神殿に辿り着く前に優太が拾ってくっ付いてきたコオロギだ……それに、こいつは俺達に幸運をもたらす存在となりそうだ。引田……これが、その窪みに嵌め込む鍵とやらなんじゃないか?」 若干パニックとなっていた引田を落ち着かせ、身を屈めながら、誠は【コオロギ】とそれが口に咥えていた【正四角形の物】を拾い上げると真面目な表情を浮かべつつ言うのだった。

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