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仲間全員と脱出するためにライバル同士は奮闘する③

(ま、まさか…………認めたくはないが、サンなのか!?それに――さっき引田の胸を突き刺してから俺を抱き締めたのは優太なのか……っ……じ、じゃあ……何処かにミストも__っ……) 黒兎の鷲の面を被っている謎の存在の正体を察した誠は額に汗を滲ませつつ、顔面蒼白となる。 《ウミス・ノナ》という砂漠地帯に来た時____つまり、この【砂の神殿】に辿り着く前までは確かに灼熱の太陽が照りつけていて暑さで干からびそうになっていたため汗が吹き出すのも分かるものの神殿内はヒンヤリとした冷気に包まれていて、むしろ肌寒くなるくらいだというのに____。 今、誠の額に滲み出ているのは焦りと不安からくる冷や汗だ。ベニーオや他の動物面と者らといった敵に操られる事を回避して唯一正気を保っていた引田は地面にぐったりと倒れ、うんともすんとも言わない。最悪の事態が頭をよぎる。それに誠自身の体も___つい先ほどから、まるで【石】になったかのように動かせない。 目を動かす事しか出来ない誠が辺りに視線をさ迷わせると、弓矢を構えて此方へと標準を合わせつつ次なる攻撃に備えている【鷲の面を被ってながら黄金の山のてっぺんに立ち正気を失っているサン】と___その向かい側にある小さめの黄金の山のてっぺんに立っている【羊面を被って木杖をぐるぐると掻き回すような仕草をしながら詠唱を口にし正気を失っているミスト】が目に飛び込んできた。 すると、唐突にどこからともなく___宴の間にいた筈のベニーオとワニの面の男が身動きすら碌にとれない誠の前に悠然とした態度で現れる。 【さあ、お客人___あなたも快楽の宴の場へと戻りましょう?そうすれば、今までの我等に対する無礼は許して差し上げましょう……お客人といえど神では御座いませんゆえ――我等のすべき崇高なる宴を邪魔するのであれば……此方も黙ってはいないというもの……さあ、我等と共に新たなる王の誕生を祝いましょう】 「____断る。」 仲間を操って奇怪な姿にさせ、尚且つ__いけしゃあしゃあとのたまるベニーオの発言を聞いて腸が煮えくりかえるような強烈な怒りを抱きつつ誠は毅然とした態度で言い放つ。 暫しの間、辺りが静寂に包まれたのも束の間__見る見る内にベニーオの美しい顔が怒りで歪んでいき、それと同調するかのように徐々に周りの景色が変わっていく。 鷲の面を被っている【サン】が誠の方へ容赦なく弓矢を放つ。逃げようのない誠の体に本来ならば仲間である筈のサンから放たれた弓矢が突き刺さる。肉体的な痛みよりも、むしろ仲間から傷付けられたという精神的な痛みの方が大きく___普段、冷静な誠でもこれにはお手上げだといわんばかりに切なげな表情を浮かべた。 黒兎の面を被っていた【優太】がそれを取り外し、誠の目を真っ直ぐに見つめながら傷心の誠を慰めるかのように唇へ優しく口付けする。その途端、誠の体がガクンと両膝を打つような形で脱力してしまう。 羊の面を被っている【ミスト】が一旦は止めていたものの、木杖をぐるぐると掻き回すような仕草をしつつ詠唱を唱えるのを再開させた途端に周りに囲まれた黄金の山のひとつが巨大な【虎】へと姿を変える。 そして、その【黄金の虎】は___ベニーオや他の動物面の者らの意に反する答えを導き出した誠を喰らおうと襲いかかってこようと駆けてくる。 「…………っ____!?」 もはや、これまでか_____と誠が諦めて目を固く瞑ってしまった時だった。 グイッ____と背後から何者かに引き寄せられる。そのおかげで、【黄金の虎】からの攻撃に寸でのところで逃れられた。 「木下誠――ぼくとライバルであるお前がそんな顔するなんて……似合わないよ。それより、まずは真っ直ぐ、ぼくの目を見て__そして、ぼくが言う言葉を繰り返して……いい?」 「…………ИЗεЭжшε§фω」 弱々しく誠は背後から己を引き寄せてくれた人物の言葉を繰り返す。すると、徐々に脱力さがなくなっていき、やがて意識も鮮明となっていく。そして、それにつれて徐々にだが誠は己を危機から救ってくれた人物の正体に気付いていく。 「ひ、引田……っ……ど、どうして――ここに!?」 その正体は、先ほど【黒兎の面を被っていた優太】に胸元を刃物で突き刺されて地面に伏した筈の引田だったのだ。

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