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仲間全員で脱出するためにライバル同士は奮闘する④
「詳しい説明をしてる暇はないけど――ぼくの代わりにライムスが身代わりとなってくれた……そして、ぼくは目的の物を探すために一時的に皆の元から離れてた___とりあえずは、それでオッケー?さっきからずっと――離れた場所から皆の様子を伺ってた__全くライムスは本当に優秀なスライムだよね」
「つまり……何が言いたいんだ?」
誠は頭の中で引田の言わんとしている内容を理解しようとしたが、それは無理だと潔く諦めて怪訝そうな様子で仲間の顔をじっと見つめながら聞いてみる。
「____それは、ぼくが見つけたコレが重要な鍵となる……っ……!!」
そう言いながら、引田はあらかじめ手に持っていて誠に見えるように差しだしていた【蛇】が彫られた四角い煉瓦を今にも誠に喰らいつこうとしている獰猛な《黄金の虎》の口に向かって勢いよく放り投げた。
「さあ、餌付けの時間だよ……っ___卑怯ものの蛇女のお味はどうだい!?」
ばり、ばり____
むしゃ、むしゃ___と豪快な音をたてながらかつて黄金のコインの山から産み出された【黄金の虎】は引田が放り投げた《蛇が彫られた四角い煉瓦》を大きな口でキャッチすると黄金の鋭い牙で噛み砕く。
【ぎ……っ___ぎゃあああっ……よくも――よくも……っ……矮小なるダイイチキュウのニンゲンこときが……!!】
最後に、そう言い残して―――ベニーオは黒い蛇と化した髪を靡かせながら、断末魔と共にその場から消え去った。ベニーオがいた場所には、さらさらとした灰色の砂の山が出来て、やがてそれさえも何処かへと流れていってしまうのだった。
「あ、あれ……僕―――どうして……こんな所に……!?」
「な、何なんだ……この奇怪な被り物は……っ……それに私もミストも__何故、こんな場所に……!?」
「うわっ……何これ……っ___変なのがミストになついてくるんだけど……ちょっと、マコトとヒキタは……何を楽しそうに笑ってるの!?」
それから暫くして、ベニーオが消え去ったことで正気を取り戻した優太とサン___それに何故か消える素振りさえ見せない《黄金の虎》になつかれて怪訝そうな表情を浮かべているミストが安堵の笑みを浮かべている誠と引田の元に順々に集まっていき会話を交わすのだった。
しかし、そんな久々の再会を邪魔するかのように―――黒い3つの影が喜びに満ち溢れている誠達の背後へと忍び寄ろうとしているのだった。
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