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~砂の神殿からの脱出~

「サラマンダイルだ……っ___しかも厄介な事に激昂状態になってる!!ちょっと、これはかなり危険な状況だよ……サラマンダイルは激昂状態の時は攻撃力と素早さが増すんだ……しかもさっきの咆哮した時に黄金のコインが崩れたて海みたいになった地面と同化して潜り込んだせいで__何処から攻撃が来るか予想すら出来ないよ」 「くっ……こうなると、攻撃するのも一苦労だな……しかも、厄介なのはこのイヌの魔物も同様だ……っ……黄金の海と化した地面に潜ったあの魔物が吠えた途端に――コイツらまで姿を変えるとは……ミスト――地面に潜った魔物だけでなくあのイヌの魔物達の動きにも気をつけろ……コイツらの背中から生えた剣の餌食となるぞ!!」 ミストとサンが苦戦中なのを会話から察した引田と誠(優太)だったが、三人とも仲間であり尚且つダイイチキュウから来た自分達よりも戦闘慣れしているミストとサンを信用しているため__その場は任せ、三人で出来る事を達成するために無我夢中で【猫が彫られている煉瓦】を探す。 「あった……おい、俺達が探している煉瓦ってのは____これじゃないのか!?」 「木下誠……よく見てみなよ__これは猫の頭を持つ女神《バステト》が彫られてる煉瓦であって、ぼくらが探してるものじゃ……な___」 と、誠の問いに対して途中まで言いかけた引田が急に口を閉ざして何やら考え込んでしまう。すると、突如___引田は誠達の制止も聞かずに堂々とした足取りである壁画の前に移動した。 古代エジプトも【神々】が描かれている壁画だ、と___かつて、世界史の教科書で目にした事があるという記憶を思い出した誠と優太は無我夢中で何かを手探りで探している引田を傍らで見守りつつ目の前の色鮮やかな壁画をジ ッと凝視するのだ。 ふと、引田が壁画に描かれた【ラー】というハヤブサの頭を持つ神の目の部分を人差し指で押し込んだ途端に、【ラーの】頭上に描かれている赤い太陽の中心から四角い煉瓦が落ちてきて引田の手中に抑まった。 「やっぱり、あった…………いや、巧妙に隠されてたんだ__あのベニーオとかいう蛇女がわざわざ……こんな分かりづらい場所にワニの頭を持つ神《セベク》の彫られた煉瓦を隠していたってことは___これも【猫が彫られている煉瓦】と同様に重要なアイテムだってことだ……つまり___」 「つまり、引田が言いたいのはこれを持ってミスト達の元に戻って壊してもらえば……状況的に不利な僕らにも勝機はあるってこと?」 「うん__と言いたい所だけど、まだ微妙な所かな。とにかく、天秤の窪みに嵌め込む最重要な【猫が彫られている煉瓦】を見つけないことにはどうしようもないよ――もしかしたら、それも何処かに巧妙に隠されてるのかもしれな……い……っ……」 その時、がっくりと肩をおろす優太達の会話を聞いていたかのような絶妙なタイミングで――どこからともなく一匹の【スカラベ】が小さな手足を熱心に動かしながら三人の前に現れた。 その背中には___三人が無我夢中で探していた【猫が彫られている煉瓦】が乗っかっている。 優太がおそるおそる手を伸ばして、その煉瓦を拾い上げた時___【スカラベ】の体が僅かに熱い事に気付いて怪訝そうに首を傾げたけれど、ずっと探していた物を手に入れた嬉しさの方がそれよりも遥かに上回っていたため三人はほぼ同時に笑みを浮かべるのだった。 嬉しさと安堵さとが入り混じった笑顔だった。

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