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ようこそ、【幻惑のオアシス】へ①

◆ ◆ ◆ 「ひ、引田……っ___どこにいるの!?」 水場があるオアシスにいるからか、暑さは砂漠を歩き続けていた時よりも幾分か和らいでいた。無我夢中で走り続ける僕の頬を、どこからか吹き付けてくる風も__360℃砂で囲まれていた先程に吹いていた熱を含んで、まるでドライヤーから噴出してくる乾燥しきって汗が吹き出るような熱風よりも僅かながらだけれども爽やかなものだ。 しかし、それでも息をきらせつつ緑色の葉が生い茂ってあちこちを覆い尽くしている足場を全力で走り続けるのはきついものだ。ダイイチキュウのジャングルのように、周りに生い茂る葉は雑草のように短い葉もあれば、僕の背を悠々に越すくらいに長い葉も生い茂っているせいで気を抜くと、足が草にとられて__つんのめって前方へ転びそうになってしまう。 癒しの場であるオアシスといえども__澄んだ青空から太陽が照りつけているのは同じであり、旅人の体力をじわじわと時間をかけて奪っていくのは変わらない。水場がある分、砂漠の海を歩き続けるよりかは僅かにマシというだけなのだろう。 「……あっ……!?」 ドサッ………… 僕は気を緩めていると転倒してしまうような不安定な足場を進んでいく度に、油断しないようにと細心の注意を払っていたのだけれど、ふいに軽い目眩を感じてしまい__とうとう、足をとられて前のめりに倒れてしまう。 少しの間、目眩のせいで頭がボーッとしてしまいすぐには立ち上がる気力さえ無くなってしまう。 (こんなところで――倒れてる場合じゃない……早く、早く__引田を捜して皆の元に戻らなきゃ……っ……) そう思い直して、まだ僅かに頭の中がミキサーでぐる、ぐると掻き混ぜられているような感覚釘付けに囚われつつも何とかよろめきながら立ち上がろうとした時___、 「ち、ちょっと___お前まで何処に行くの……っ…………!?」 ピョンッ……と自分の肩にとまっていた【コオロギ】が急に飛び跳ねて、軽快な調子で前方へと弾むように移動していくのを見て__未だに軽い目眩に襲われている体に鞭打って出来るだけ急いでコオロギを追いかけていくのだった。

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