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ようこそ、幻惑の【オアシス】へ③

相変わらずキキ、キキキと__まるで砂の神殿内で見かけた鼠、あるいは猿のような甲高い笑い声をあげながら数人の黒髪の乙女達は『おいで、おいで』といわんばかりに手招きをしてくる。 数人の乙女の内、真ん中にいる一人は赤いビーチボールを手に持ち、左右にいる二人の乙女達の手にはダイイチキュウで食べた事のある赤い(イチゴだろうか)シロップのような液体がかかっているカキ氷を手にしつつ真ん中の乙女と同様に引田を背中に背負ってじり、じりと後退りしつつ此所から去ろうとしている僕を誘うように手招きするのだ。 その時、爽やかにそよぐ風に乗りつつ__何処からか、ふわぁ……っと甘酸っぱい香りが僕の鼻を刺激してきた。その甘酸っぱく尚且つ良い香りを嗅いだ途端に、僕の意思とは裏腹に__途徹もなく強烈な【快感】ともいえる心地よさを感じてしまい、無意識の内にフラフラとした足取りで黒髪の乙女達の元へと近付いていく。 しかし、その時___今まで何も話さずグッタリとしていた引田の半開きとなった口から『ダメ……だ……ダメだよ……戻っ……て……』と寝言のように繰り返すされてハッと我にかえった。 「僕は、きみらとは一緒には遊ばない……っ……向こうに仲間が待ってる!!」 はっきりと乙女達に拒否という感情を言い放った僕は、そのままくるりと彼女らから背を向けて急いで誠達が待っている泉まで戻るために一歩踏み出そうと足を動かした時___、 【ギギ、ギ……ッ……ギギギィー…………!!】 凄まじい怒りの咆哮が背後の乙女達のいる方から聞こえて、ビクッと体を震わせてからおそるおそる振り向く。もちろん、そうしたくて振り向いた訳じゃなく反射的な行動だったのだけれども__そのおかげで、此所から早く逃げなくちゃという危機感を抱く事が出来た。 腰まである美しい黒髪を逆立てつつ、目を吊り上げ口元が裂けてしまうのではないかと思う程に歪めつつ笑みを浮かべ、凄まじい怒りを露にする恐ろしい黒髪の乙女達が獲物を見つけた肉食獣のような様で僕らを睨み付けているのだった。 ザシュッ…………!! と、ここにきて___唐突に真ん中にいる怒りの咆哮をあげた黒髪の乙女が手にしていた赤いビーチバレーを、この場から逃げようとしている僕らの方へと投げてきたのだった。

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