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ようこそ、【あたしのオアシス】へ①
ダイイチキュウの南国にあるような高々とそびえ立っていたヤシの木は、どんどんと枯れていき__それだけでなく腐ったように毒々しい紫色へと変化していく。
僕の肩に止まっている【コオロギ】以外の生物は____ここに辿り着いたばかりの時は水辺で泳いでいたりしていたものの、まるで最初からいなかったといわんばかりに姿を消した。
地に生い茂る草花は僕が踏む度にガサッという音を立ててドライフラワーのように風化していき、中央にある泉は先程までは澄み切った透明な水が嘘のように毒々しい赤紫色へと変化していた。
よくよく見てみれば、泉の中___所々に金糸でぐるぐる巻きにされた球体がプカプカと波に揺られながら浮かんでいるのが分かる。
とても、嫌な予感がした___。
「____ようこそ、【あたしのオアシス】へ……ここは、あたしの世界!!愛しい愛しいリッくんが、あたしのために与えてくれた崇高な場所よ……そうね、少し言い方を変えると__あたしの趣味のためにリッくんが与えてくれた場ってところかしら。まあ、今はそれよりも___ええと、ユウタくんだったかしら?ずいぶんと、お久しぶりね」
「ア、アラクネ…………!?」
「まあ、いやーね……っ……そんな鳩が豆鉄砲を喰らったみたいな顔をして。あたしみたいにキュートなレディに失礼だわっ……それに、あたしには___マリアっていうれっきとした名前があるのよ……これだって愛しい愛しいリッくんがつけてくれたものよ!!」
ふと、周囲の風景の__唐突過ぎて尚且つ奇怪すぎる変化に戸惑っていた僕の真上の方から聞き覚えのある甲高い少女のような声が聞こえてきたため驚きを隠せないまま目線をそちらへと移した。
そこには、全体が毒々しい紫色に変化し枯れ果ててしまっていて思わず涙が出てしまうくらいにツンと鼻を刺激してくる腐敗臭を放つヤシの木の枝から金糸を垂れて逆さまにぶら下がっているアラクネの姿があったのだ。
こんな話をしている場合ではない、とハッと思い直した僕は軽々しく舐められないように出来るだけ鋭い目付きで真上にいるアラクネを睨み付けるのだった。
無邪気な少女のようなアラクネに騙されてはいけない____。
容姿、口調、行動はダイイチキュウにいた少女を模しているとはいえ、アラクネは【金野 力】と共謀して僕の仲間を拉致している【倒すべき敵】なのだ。
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