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ようこそ、あたしの【オアシス】へ②

「それよりも、誠達は___どこに行ったの?」 「あら、まさか……あたしがお仲間達を誘拐したと思ってる?ざ~んねん、あたしはお仲間達を苦しめてる訳じゃないわ……ただ、あたしのお人形さん達のお遊び相手になってもらっているだけよ……っ……!!もちろん、命も奪っていないし体に傷ひとつすらつけてないわ__今すぐに解放してあげてもいいくらい。でも、それには約束してほしい事があるの」 アラクネのその言葉を聞いて、僕は首を傾げむつ次の言葉を待つ。その最中も、鼻が曲がりそうになるくらいに臭い腐敗臭を放つ木々が風に吹かれているせいで周囲一帯に撒き散らされて眉間に皺を寄せる。さっきまでの魅惑のオアシスが嘘のように荒れ果てた地獄の光景となり、誠達を取り戻したら一刻も早くこの場から離れたいと思うくらいだ。 「あなたと____あなたのお仲間の内の何人かはリッくんの主のチカっていうヒトとドウキュウセイだったのよね?それなりに仲が良かったって――そのヒトから聞いたわよっ……そこで、提案なの。あなた、ううん……あなた達お仲間全員__そのチカっていうヒトを見限って……リッくんのお友達にならない?もちろん、優遇はするわよ?お金だってあるし、お願いなら何だって叶えてあげるわっ……でも、それはリッくんの為に尽くすなら、の話だけど」 「そ、それは……それは__つまり、金野力の__言いなりになれってこと?」 「いやーね、言いなりなんて。リッくんは優しいのよ……もし、リッくんのお友達になるっていうのなら、あなた達のお仲間のナギっていうお仲間も___すぐに助けてあげるわよ?さあ、どうするの……っ……もし、あたしの言葉を受け入れるなら__このカジツを食べて?」 ポトッ……と頭上から何か固い物が落ちてきた。 ダイイチキュウでも何度か食べた事のあるそれは___どこからどう見ても、真っ赤に熟れた林檎だった。 それを拾い上げ、僕はまたしても選択を迫られる___。 元はクラスメイトとして共に過ごしミラージュの王子である【知花】を選ぶか、ナギをすぐにでも解放する権利を持っている【金野 力】を選ぶか__。 僕は真っ赤に熟れた林檎を手にしたまま暫く考え込む。 そして、決意した僕は手にした林檎を毒々しい紫色に変化してしまってぶく、ぶくと泡立つ泉の中へと勢いよく放り投げるのだった。

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