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アラクネとの戦い――の筈が異常事態発生⑦

「サン、マコト……それは、いいから早くユウタを助けないと……っ……この間にも、どんどん変化してってるよ……それに防御壁も修復し始めてる……喧嘩なんかしてる場合じゃないよ !!」 【ウィスパーマッシュ】の群れ__それに樹上にいる【サエーナ鳥】までもが頼れる仲間の召喚魔法によって現れた《バロメッツ》により眠りの世界に誘われ静寂が支配する周囲にミストの呆れと怒りが混じったような声が響く。肩を震わせつつ__はあ、はあと息をしているのを見るに相当疲れているようだ。 「……っ…………!?」 その声を耳にした途端、誠はサンに何かを言う事なく慌てて未だに【モルボル】に捕らわれの身となっていて尚且つ【モルボルになりかけている】優太の元へと素早く駆け出していた。ミストの言う通り、徐々にとはいえ防御壁が修復し始めていた。 ダダダダッ……と駆け出している最中、誠はどうすれば優太を救うに十分なダメージを【モルボル】に与えられるのか__という事を必死で考えていた。武器は手に持った小型のナイフしか持っていない。以前、誰だかが言っていた『魔物には必ず弱点がある』と言葉をふっ__と思い出したのは良かったものの【モルボル】の弱点がどこにあるのか、または具体的に何なのかが分からない。 そんな状態の誠だったから、弱点について考える事ばかりに気を取られ、後ろから___ライムスが着いてきていたのには気付かない。 ◆ ◆ ◆ 頭がボーッとして、まるで写真がピンぼけしているみたいな状態で周りの風景が見えてしまっている事に気付いた僕だったけれど__どうしても体を起こす事も、ましてや指一本さえ動かそうとする気力が沸かなかった。 唯一、目だけはキョロキョロと動かす事は出来るけれど__どんどんと下半身から人間離れしていってじっている今の異常事態にさえも漠然とした恐怖感しか抱く事が出来ず__抵抗しようなどという気力さえ沸かない無気力状態に陥ってしまうのだった。 下半身が___どんどんと大小様々な人間にそっくりな目玉だらけの触手に変化してっている。自分の意思とは関係なしに勝手に動き、ぬちゃ、ぬちゃと嫌な音まで聞こえてきてしまう。 (ぼく……このまま……にんげん……じゃなくなるの……かな……そうた……まこ……と……み……んな……っ……) ぽろっ……と涙を溢した直後だった。 「おい、化け物__優太から離れろ……っ__優太はダイイチキュウの人間だ……それに……」 世界で一番大好きな誠の声が聞こえてきた。 「優太は俺だけのものだ……っ……!!」 ザッ……と何かを勢いよく踏み込んだような足音が聞こえて僕のボンヤリとした視界の中に__真上から落ちてこようとする誠の姿が映るのだった。

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