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アラクネとの戦い②
ポチャン……ッ……
水面に波紋が広がり、【ウィスパーマッシュ】は毒の泉の底に沈んでいく。暫くして、水中から顔を出したのは――見慣れていた筈なのに久々に対面した悔しさと愉快さとが交じった複雑な表情を浮かべる【アラクネ】のものだった。
「ふふふ……まさか、あたしの可愛い子達を【バロメッツ】とかいう魔植物を使って眠らせちゃうなんて――しかも、あの醜悪なモルボルを倒しちゃうなんて……思いもしなかったわ__でも、これからは__あたしが相手よ…とっておきのショーをお見舞いするわ!!リッくんの望みを受け入れようとしない愚かなニンゲンとエルフ達__あたしのパフォーマンスに酔いしれなさい……っ……!!」
毒の泉の左右には立派な大樹が植えられていて、その片方の大樹のてっぺんにはミストが召喚した《バロメッツ》の攻撃によって眠りについている【サエーナ鳥】がいる。
【アラクネ】は毒の泉の中で【ウィスパーマッシュ】を食べた事によりエネルギーを蓄えたせいで風船のように膨れあがった胴体から糸を吐き出し、両脇に植えられている立派な大樹の幹に強靭な黄金色の糸束をくっ付ける。
その状態で、毒の泉から完全に姿を現したため強靭な黄金色を糸束はゴムのように伸び__【アラクネ】の体は毒の泉の真上で浮き上がった状態となるのだ。
これから、彼女がどのような攻撃を仕掛けてくるのか予想すらつかずに警戒しきって張りつめた空気を醸し出している僕らを嘲笑うかのように意地悪く微笑んでくる【アラクネ】は__ダイイチキュウにいる幼い子供が公園のブランコで遊ぶように体を上下に揺らしながら鼻歌交わりで僕らを挑発してくるのだった。
「この……っ____忌々しい蜘蛛女め……っ……!!」
眉間に皺を寄せつつ不快さをあらわにしているサンが勢いよく放った矢が、ヒュッ――と風を切り、まっすぐに【アラクネ】へ向かって飛んでいく。
しかし、サンの怒りを込めた矢の攻撃は【アラクネ】に当たる事はなく勢いをつけて前方に揺れ動いた鋼のように硬い【アラクネ】の胴体に弾かれてしまった。しかも、【アラクネ】の胴体に致命的なダメージを与えられないと瞬時に悟ったサンはその後に何本か強靭な黄金の糸にも向かって放ったものの、それにすら碌にダメージを与える事が出来ずに弾かれてしまい__残念ながらサンが放った弓矢全てが毒の泉に吸い込まれるかの如く落ちていってしまうのだった。
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