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白銀世界の宿屋での夜⑥

◆ ◆ ◆ 「…………」 「…………」 互いに無言のまま、静寂が包む部屋の中____。 一歩、一歩と青木のいる方へと近付いていく。その度に、床がギシギシと鳴るため、なるべく響かないように慎重に近付いていった。 既に寝るための準備をし終えて、布団をかけながら豪華とはいえない簡素なベッドで横になっていた青木は僕の事など興味がないといわんばかりに身を右にある壁側に向けて眠りにつこうとしている。 その事に対して、何故か無性に腹がたった僕は何としてでも青木を振り向かせるためにベッドに腰をかけてから横たわり、所々汚れている布団をかけた後――まるで、《コイビトドウシ》がするように青木の背中にピッタリと自分の身を寄せる。 そして__、 「ねえ、青木――君も……悩みがあるんでしょ?そんな些細な悩みなんて忘れられるように僕が、慰めてあげるよ。あ、でも重かったら、ごめんね?」 「なっ____何、言ってんだよ。つーか、優太――お前、これから何するつもりだよ!?さっさと、退け……第一、こんな事したらあいつが黙ってねえだろうが……っ……」 横たわる青木の体の上に乗っかかり――僕は慌てて此方へと顔を向ける彼の目をジッと見つめる。全身が火照っている。それだけでなく、頭もボーッとしていて真下に押し倒されている青木の事しか考えられない。 「あいつ____?ねえ、青木……それよりもさ、僕がマッサージしてあげるよ。ダイイチキュウにいた頃だって、誰かから優しい手つきでマッサージされたら……凄く癒されたでしょ?」 「ゆ、優太――お前……本当にどうしたんだよ!?まさか、あいつのこと__お前が大好きで堪らない誠のこと、どうでもいいなんて――思ってないよな?」 その問いかけに答える前に、僕は青木の服の上から手を当てると、そのままなるべく優しい手つきになるように心がけながら未だに呆然としつつ此方を見上げてくる彼の体を撫でたり擦ったりする。 最初は上半身を中心に行っていたマッサージだったけれども、徐々に下半身へも手を移動させていく内に何だか変な気分になってきた。 ドキドキして、驚愕の視線を向けてくる青木から目が話せない。ここには鏡がないから何となくでしか分からないけれど、僕の顔はきっと真っ赤に染まっているのだろうと思った。 それくらい、顔も全身も火傷してしまうくらいに熱く感じるのだ____。 「お、おい……っ__優太、さっきから止めろって何度も言ってんだろ!?だいたい、そんな事したら……誠に悪いだろうが……お前、さっきからおかしいぞ……本当の優太は何処にいるんだ!?」 「いやだなぁ……僕は僕でしかないよ?それに、青木こそ、そんな事言って……ここはこんなに期待しているくせに。素直になりなよ。だいたい、誠は単にクラスメイトだっただけの……無口で無愛想な不良でしかない誠よりも……僕は青木、君の事が……好き。ううん、最初は嫌いだったのに……大好きになった……だから、青木__今は僕の本当の気持ちを受け止めて?」 僕は青木の上に乗しかかり、彼のズボンに手をかける。 そして、勃起しかかっている青木のペニスを優しく握りしめる。手を緩く上下させ愛撫しながら、この行為を受け入れきれないといわんばかりに真下で顔を真っ赤に染めつつ此方をギロッと睨みつけてくる彼に対してニッコリと微笑みかけるのだった。

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