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白銀世界の宿屋での夜⑧

「ミミック坊や__これ、いったい何なの?」 『ほっ 、 ほっ 、ほっ__これ は お主と そこにて 鬼の形相 を しておる 童との 愛なる行為 を 成功させる 手助け をしてくれる 有難き巻物 じゃ …… ……さあ 、 そこに 記してある もの の 中から あと二つ、 お主 が 欲しているもの を 選ぶが よいぞ !!』 ミミック坊やいわく、青木と僕の仲を深める手助けをしてくれる巻物とやらを受け止めたせいで、一時的に未だに鋭く睨み付けてくる彼の体の上から離れた。 しかし、待ってました――といわんばかりに青木は両膝をつきながらこの部屋から逃げようとす。正確には、部屋からではなく僕から逃げようとしていたと察した僕は無性にイライラしてしまう。 「青木、今__僕から逃げようとするなんて……許さないよ?だって、これが……もしも、僕じゃなくて坂本先生が相手だったら青木は逃げようとしていないでしょ?ミミック坊や__青木を捕らえててくれる?あ、食べたら駄目だよ――青木は、僕のだからね」 『よい 、 よい …… …… 我 は お主の 命に 従うと しよう 。 さあ 、鬼 のような 童 よ 。そんな に 暴れる で ない の じゃ …… …… ない の じゃ!!』 「……っ___優太、お前……本当にどうしちまったんだ!?俺は、今のお前と……そんなふざけた行為をする気なんざ更々ねえぞ……っ……だいたい、清治(きよはる)は関係ないだろ!?」 ミミック坊やは、僕が命令するなり即座に行動してくれた。大きく口を開け、青木がいる方向に向いてから深く息を吸い込む。そして、そのまま自らの方に青木を吸い寄せてくれた。 それだけでなく、ルビーのように真っ赤な舌を蛇ののように細長く伸ばすと青木の体に巻き付けて程よい力で締め上げつつ捕らえてくれたのだ。 青木が言い放った【清治】という名前__それは、坂本先生の下の名前であり――かつて、ダイイチキュウでクラスメイトとして共に過ごしていた時には決して耳にしなかった呼び名だった。 青木が坂本先生に対して特別な感情を抱く前までは、他の皆が呼ぶように【サカセン】とアダ名で呼んでいたから____。 (青木は本当に僕じゃなくて……坂本先生の事が好き、なんだ……彼を……本気で____) その事に対して異様なくらいに嫉妬心に囚われてしまった僕はミミック坊やが与えてくれた巻き物に目を通す。 何が、何でも青木の心を射止めなくちゃ__というその思いだけで釘付けとなっていた僕は遂に彼の心だけでなく身までをもメロメロに出来そうなものを巻き物に幾つも記されている中から見つけた。 「ミミック坊や____これを、僕に与えて……そうすれば絶対に青木の身も心も……僕のものに出来る――ううん、絶対に僕のものに……しなくちゃいけないんだから……っ__」 『お主 の 願い 承った なり 。 暫し 、待たれる が よい の じゃ !! 』 ニッコリと微笑みかける僕をどことなく怯えた瞳で見つめてきて、尚且つ雨に濡れる子犬のようにガタガタと身を震わす青木を目にしながら__ミミック坊やへ淡々とした声でお願いした僕は再び彼の真上に乗っかると、そのまま優しく抱き締めるのだった。

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