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◆迷える者達は白銀世界で何を見るのか①◆

◆ ◆ ◆ ふと、目を覚ました誠達に襲いかかってきたのは一面が真っ白な世界で見渡す限り何もないという視覚による恐怖感と、凄まじく吹き荒れる吹雪に曝されることによって最悪の場合、命を落としかねないのではないかという精神的な恐怖感だった。 びゅおー、ひゅおおお__と、まるで何かの生き物が彷徨をあげているかのように不気味な音が鳴り響いていることも、彼の恐怖感を助長している。 ミストやサン――それに引田(ライムス)やシリカとホワリンは僅かに誠がいる場所から離れてはいるものの目に届く範囲内にうつ伏せとなって倒れていることに気付いて少しばかりだが安堵した。 こんな極寒の中、仲間が散り散りとなり離れ離れになるなんて考えるだけでもゾッとしてしまう。 しかし、安堵している暇はない。こんな吹雪に曝される中で眠っていては、ミラージュ育ちのエルフであるサンやミストはともかく、ダイイチキュウから来た転移者で人間の引田とミラー育ちでありながら子供であるがゆえに体が小さく、また王子であるがゆえに体力がなさそうなシリカはかなり危険かもしれない。ライムスなんて、引田に抱きかかえられているとはいえ、もしかしたらカチンと凍りついてしまい《冷凍スライム》と化してしまうかもしれない。 (って__そんなことを考えてる場合じゃない……早くアイツらを起こさないと……っ……) と、ハッと我にかえった誠は慌ててうつ伏せに倒れているミスト達へ駆けよって必死で彼らを起こすのだった。 ◆ ◆ ◆ そして、黙々と吹雪が吹き荒れる白銀世界を歩いている今に至る。見渡す限りの真っ白な世界と、かろうじて雪山が存在するこの世界は誠達にとって体力を消耗させるだけでなく精神力さえも消耗させていってしまう。 優太を探す手掛かりになりそうな物が何も存在しないせいだ。 先ほど、この白銀世界に迷い込む前にミストが「ユウタはどこか建物の中にいるんじゃないか」という発言をしていたけれど誰の目にも建物など映ってはおらず、ただただ真っ白な世界をさ迷うばかり____。 全身にひっきりなしに白い雪が張りついてきて、正に《迷える子羊達》のような見た目となってしまっている誠達だが、それでも大切な仲間である優太を探すべく黙々と迷路のような雪の道を歩き続ける。 「ねえ、こんな時に何だけどさ……この変な世界でも空にはホシが煌めいているんだね……ダイイチキュウでは流れホシっていうんだっけ?」 「ああ…………流れ星というが、それにしても……何かが変な気がする」 そんな中で、ふいに雲ひとつない夜空を見上げたミストが何気なしに話しかけてきた。確かに、ミストの言うとおり激しく吹雪が吹き荒れているにも関わらず雲ひとつない夜空にはキラキラと煌くホシが見える。 ダイイチキュウでは都会に暮らしていたため、いわゆる雪国と呼ばれる地域の知識はあまり無かったもののテレビで映される天気予報などで見かける雪景色の空はドンヨリとしたイメージが強く、今のように夜空に煌くダイヤモンドみたいに光り輝くホシが出ているのは何となく違和感を覚えてしまった。 誠とミストが会話を交わしている、その時だった。 流れ星が、どんどんとスピードを早めて一度足を止めた誠達一行に向かって真っ直ぐ夜空から降ってきたのだ。 まるで、ダイイチキュウに降り注ぐ雹のように____。

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