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◆迷える者達は白銀世界で何を見るのか②◆
ダイイチキュウで時として町に降り注ぐ雹のような黄色く丸い物体は、地面を覆い尽くす雪の上に落ちた瞬間にぴき、ぴきとひび割れていきその中から三体の物体が出てきたのだ。
ひとつめは、先端が丸みを帯びているものの凸凹になっていて一定速度で《桃色→青→紫→黄緑→黄色→白》と色が変化していく小球状のもので黄色く変化した時には、それこそ夜空に浮かぶ星のように見える。
ふたつめは、透明な楕円形の球体の内側かつ中央部分に、外側よりも小さくうねうねしている白い物体が存在する奇妙なもので、どことなくライムスに似ている気がした。しかし、そのことについてあまりいい気分がしないのか途端に人型へと変化したライムスが他の仲間と共に奇妙そうな素振りでそれをジーッと見つめている。
「わっ……な、何これ__こんな変な魔物、今まで見たことがないよ!?」
「ミストの言うとおりだ。こんな魔物は、今までに見たことがない……そうですよね、シリカ様__って、おい……シリカ様は何処に行かれたんだ!?」
マジマジと興味深そうにその物体を見つめるミストや、引田とライムスとは裏腹にサンは怪訝そうに警戒心を緩めることなく険しい目付きで一瞥する。
すると、サンが今まで側にいたはずのシリカがいないことに気付いて今度は少し目元を緩めつつ心配そうに辺りをキョロキョロと見渡す。
あれだけ好奇心が旺盛で子供らしいシリカのこと。目の前に、こんな変なものが現れたと知ったら咄嗟に目を輝かせながらそれらに向かって飛び込み兼ねないシリカがいないのは確かにおかしいと思い直した誠を含む一行達はサンき続いて慌てて辺りを見渡す。
すると____、
「ねえ、さっきまで__あんな穴なんてなかったよね?」
ふと、いち早く異変を発見した引田がある場所を指さした。その異変は、誠達が今いる場所から少し離れた場所で起きていた。いつの間にか、真っ白な雪が降り積もる地面にポッカリと黒い丸穴ができていたのだ。
そして、その黒い穴の中から__シリカと思われる小さな白い手が伸びていて出たり引っ込んだりを繰り返していた。
「ま、まさか____あの中って水なんじゃ……あの動き、溺れた人間のものとよく似てるよ。ぼくも、溺れた経験があるからよく分かる……早くあのシリカっていう我が儘王子を助けないと!!」
そう言いながら、あれだけシリカに対してあまり良い印象を持っていなかったであろう引田が慌てて雪と氷の下に覆われて隠れていた水中に落ちてしまい救いを求めている彼へ向かって急ぎつつ尚且つ同じように落ちないために慎重に近付こうとする。
だが、引田が溺れるシリカを助けようとしたのと、ほぼ同時のタイミングで今まで大人しく此方に対して敵意を現さなかった二体の謎の物体がそれを許さないといわんばかりに妨害しようとしてくるのだった。
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