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~肩慣らしで集団ゴブリン退治のクエストへ~

◆ ◆ ◆ ここは宿屋のカウンター前____。 一夜を過ごした【アズキ】【キナコ】【マッチャ】__そして、僕と青木の面々は宿屋のカウンターへと集合するとダイイチキュウで見慣れていた黒板によく似た《クエストボード》なる物をジーッと見つめていた。 《 至 急 、ゴブリン の 集団討伐 を 求む 。報酬 は 20エンド ―― 村人 A》 【うーん 、そうだな …… 肩慣らし の クエスト なら これ なんかが いいんじゃないか ? それ で いいか …… っ……て 、 ユウタ に アオキ ……どうしたんだ ?】 【 …… …… 】 僕は【アズキ】に問いかけられ、尚且つ無言状態の【マッチャ】から睨み付けられてもすぐには気付かずにボケッとしてしまった。昨夜、同じ部屋で青木に迫っても、【キナコ】が期待していたような、そういう雰囲気にはならなかったからだ。鬼のような形相をしている青木から渾身の力で突飛ばされて拒否されてしまったのだ。 青木は不機嫌そうな顔をしているし、僕は僕で青木に対する好意を一方的に拒否されてしまい面白くない気分となっていたため明らかに険悪な雰囲気が漂っていたのを【アズキ】に気付かれてしまった。 【 ケンカ 、 シチャ ダメ …… ……コイビトドウシ ナンダ カラ ナカナオリ 、ナカナオリ ノ ゴブリン タイジ……】 【なるほど 、 ケンカ したのか …… ……キナコ の 言うとおり カラダ を 動かせば イヤなこと なんか すぐ に 忘れちまう さ !! さあ 、村人たち が 困って る すぐに ゴブリン討伐 に 向かうぞ 】 【アズキ】の力強い言葉を聞いた僕らは、尚も此方をジーッと睨み付けてくる青木の視線に曝されつつも__カウンターの宿屋の娘にゴブリン討伐クエストを受けると伝えた後に、再び外に広がる【夜の白銀世界】へと足を踏み入れるのだった。 ◆ ◆ ◆ 【よし、アオキ …… …… そのまま ゴブリン共 の 目 を 狙って 弓矢 を 放て !! ユウタ 、お前 は 剣 で ボスゴブリン の 首 を はねろ 】 【スゴイ 、 スゴイ フタリ トモ オメデトウ …… ……オメデトウ 】 いくら肩慣らしとはいえ、集団で襲ってくるゴブリンの群れを退治するのはなかなか厳しいと思った僕と青木だったが何とか二人で共闘し合って青木は周りを取り囲む雑魚ゴブリンの群れを排除し、僕は【アズキ】の頼もしいアドバイス通りに雑魚ゴブリンよりも二倍は体躯の大きなボスゴブリンを倒すことが出来た。 【よし 、これで クエスト 終了 だな!! 村 に 行く前 に 戦利品 の 回収といく か 】 【ワーイ 、 ワーイ …… ……ナニガ アル カナ ~ ♪】 浮かれている【キナコ】の後に続いて僕も雑魚ゴブリンの群れやボスゴブリンが何を残したのか気になったため、未だに消えることのない死体の方へと歩いていく。 すると____、 「おい、おい___優太……左手をこっちに向けろ」 「えっ……ど、どうして……っ……!?」 「いいから、早くしろよ……アイツらの視線が__恥ずかしいったらありゃしねえんだよ!!」 どういう訳か、そっぽを向きながら言い放つ青木の言うとおりに左手を差し伸べる僕だったが、その直後に何故青木がそこまでムキになっていたのかが分かると思わず照れ臭くなってしまい今度は僕の方が俯いてしまった。 それは、悲しさからくるものではなく__あまりの嬉しさと恥ずかしさからくるものだ。 「あ、青木……これ__この指輪って……」 「さっき倒したボスゴブリンとやらが落としたもんだ。それと、その……昨夜は悪かったな……お前の気持ちを一方的に突き放しちまってよ……」 頬を赤く染めながら、青木は僕の左手の薬指にボスゴブリンが落としたという指輪をゆっくりと嵌めてくれた。中央に花の形を模してあり尚且つ赤い大きな宝石が嵌め込まれている指輪だ。 青木から贈られた嬉しさから暫く、ポーッと宝石に見惚れていた僕だったけれど不意に【アズキ】から肩を叩かれて目線をそちらへと向ける。 【さあ 、 クエスト を 依頼した 村人 に会い に 行って報酬 を 受け取ったら 宿屋 へ 戻る ぞ …… ……仲直りできて 良かった な 】 【ワーイ 、ワーイ …… ……ナカナオリ 、ナカナオリ ♪ キョウ ハ オイワイ ダネ !! 】 そのような会話を交わした後、僕らは近くにある寒村へ向かってからクエスト依頼した【村人 A】と対面すると報酬を受け取り__再び宿屋へと戻って行くのだった。

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