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◆不穏な気配◆
◆ ◆ ◆
【ネエ 、ネエ …… ……アズキ ― ― アレカラ 、ユウタ ト アオキ ヲ ヤドヤ ニ オキザリ ニ シタママダケド …… ……ダイジョウブ ??】
【なんだ 、キナコ …… ……お前 は そんな 下らないこと を 考えてたのか 。大丈夫 に 決まっている だろ ? 今ごろ 、コイビトドウシ の 彼ら は 二人揃って 幸せな 夢 の 世界 に トリップ しているさ …… ……ようやく 、ここまで きたんだ 】
【キナコ よ 、それ に ついて は 心配ない 。いつものとおり に 我々 のダミー を 用意して きた 。キナコ よ …… ……貴様 は 何 を 心配して いる ?リーダー の アズキ に 失礼だと は 思わない の か ?】
三人は雪が降り続け、村へと続いている曲がりくねった道を眉ひとつ動かさずに平気そうな様子で歩いていく。
一度はクエストを依頼した【村人A】が暮らす村から、アジトである宿屋へと戻った三人が再びこの村にやってきた目的はただ一つ____。
村に【忘れ物】をしてしまったからだ。
面倒ごとはさっさと済ませてしまいたい【アズキ】は《仲間》の【キナコ】と【マッチャ】を引き連れて、一度は離れた【村人A】が住む村まで来ていた。
【あら 、 先ほど は 私 の 願い を 叶えてくださり ありがとう ございました 。 これで 、ここ の 村人たち は 安心して 暮らして いけます 。 それはそう と …… ……なにか 、 他 に 御用です か ?】
【村人A】の問いかけを聞き、【アズキ】は笑う。笑うというよりも、ニコッと微笑みかける。周りにいる村人たちも、三人に対して尊敬の眼差しを向けてくる。
【この村 に 、忘れ物 を したん だ ……だが 、心配 は いらない 。すぐ に 済むさ …… ……あっ と いう 間 に …… ……】
【 …… ……? ? ?】
【用済み に なった おまえ ら を …… ……ショブン し 新しく 生まれ変わらせる こと が できる さ …… ……その ため に 仲間 が いる んだからな
。 キナコ 、マッチャ 、 頼んだ ぞ ……って
なんだ、もう コイツ以外 の 他 の 村人 をショブン したの か …… ……さすが は 、仲間 だ ____俺 の 望んだ通り に 動いて くれる 】
【い 、……っ ……いゃあぁぁぁ…… !?】
【村人A】が叫ぶ____。
周囲にいた村人たちは、【キナコ】と【マッチャ】の手によって既に《シタイの山》となっていたからだ。
【大丈夫 だ____おまえ も 、すぐ に この山
に 加われ 仲間 となる 。 村人A よ せめてよい夢 を 見ると いい 。 おまえ という 存在 は すぐ に また 生まれる …… ……その時 は また クエスト依頼 を 頼んだ ぞ ?】
グジュッ____と嫌な音がした。
しかし、それは【アズキ】が【村人A】に対して危害を加えたために聞こえた音ではない。【アズキ】自身が小型の剣で左腕を切り裂き、あろうことかグリグリと抉るおぞましき音だった。しかも、そんな異常ともいえる行為をしても【アズキ】は眉ひとつ動かさず悲鳴さえもあげずに顔色ひとつ変えずに無表情のまま怯える《村人A》を真っ直ぐに見据えている。
【アズキ】だけでなく、側にいる【キナコ】と【マッチャ】も騒いだりはせずにジッと二人の様子を見守っているのだ。
本能的に危機を察した【村人A】が怯えた様子のまま――じり、じりと後退りした時だった。
【アズキ】の切り裂いた左腕から、赤と青の血が一斉に意思を持ったかのようにグネグネと脈打つ。その血は、赤と青と交互に組み合わさっていき、凄い勢いで【村人A】の首を目掛けて移動していく。見た目は、ダイイチキュウのように細長い赤と青の血はやがて【村人A】の首に素早く巻き付くと、そのままバチバチと雷撃を纏いつつ勢いよく【村人A】の白い首を締め上げていく。
やがて、【村人A】は何も言わなくなった____。
【村人A】だったものは、【村人たちのシタイの山】の上に積み重なる。
【アズキ】がパチン、と指を鳴らした直後__「ジジッ……ジジジッ……」と奇妙な音と共に【村人たちのシタイ】はその場から忽然と存在を消した。
【よし 、 無事 に あれら を ハカバ へと 送ったし 、 これ で 任務達成 だ !! あと は 宿屋
に …… ……】
【マッテヨ、マダ …… ……ゴホウビ ヲ ウケトッテ ナイ ヨ !! アズキ ガ リーダー ダカラ …… オサキ ニ ドウゾ ♪】
【いつも と変わらない 順番 で、なおかつ__ 同じ 量 で 構わない 。アズキ は 私 と キナコ に
とって かけがえのない 存在 だから な …… ……】
【キナコ】と【マッチャ】がリーダーへ言ったタイミングとほぼ同じく、先ほどまで【村人たちのシタイの山】が存在していた場所に銀色の効果的の山が出現した。出現したというよりも
、空から降ってきたといった方が正解かもしれない。
【アズキ】が一番に、宿屋のカウンターの入れ物に入っていたものとそっくりな硬貨を全体の半分ほど貰い__それを、見事にたいらげてしまう。
【キナコ】と【マッチャ】は【アズキ】が残した硬貨を二人で半分になるように分け合うようにしてから、それぞれをペロリとたいらげた。
【よし 、チカラ が みなぎったところ で 俺ら が 本来 いるべき ヤドヤ へ 戻ろう …… ……計画
は むしろ 、ここから が 本番 だ !!】
こうして____、
【アズキ】をリーダーとする三人のグループは不適な笑みを浮かべつつ、ユウタとアオキが待っているヤドヤへと戻って行くのだった。
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