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再会は宿屋にて①

◆ ◆ ◆ 「どう、誠……優太君達は本当にここにいるわけ?」 「い、いや……ここからじゃ、あまり見えないな。あと、引田……あまり引っ付くんじゃない……」 沢山の冒険者や占い師のシタイが積み重ねられている洞窟から、地図を頼りになんとか宿屋らしき建物にたどり着いたのはいいものの、メンバー達は此れからどうすべきか迷っていた。 窓の外からひっそりと宿屋の中を観察してみても、同じような格好をした冒険者達は中にいて互いに会話を楽しんでいる光景は確認できるが、あとはカウンターにいる受付嬢が立っていることしか見えなかったからだ。 メンバーの中で、誠は特にこれからどうすべきか迷っていた。 記憶の中で、【妹の雪菜】として認識していた人物が受付嬢として宿屋のカウンターに立っているからだ。 (俺の記憶の中では妹の雪菜は天に召されているはず……なのに、なぜ……こんな場所に……っ____) ふっ__と、かつてクラスメイトとして接してきた【知花】のムカつく程に愉快げな笑顔が思い浮かぶ。 (もしかしたら……この白銀の世界も__奴の戯れのうち……なのか……) などと、眉をひそめつつ忌々しげに思いながらジーッと宿屋の中を見つめ続けて釘付けとなって身を乗り出していた誠だったが、ふいにグイッと隣にいる引田から引き寄せられたためバランスを崩してしまい前かがみに倒れてしまう。 「な……っ……何を……」 「しっ…………」 引田が切羽詰まった様子で、雪まみれとなった誠に言い放つ。引田が、誠に忠告じみた行為をしたのも無理はなかった。扉の割りとすぐ側にいて、尚且つ身を乗り出していた誠が下手したら気付かれてしまうぐらいの至近距離から――いつの間にか、ホワイトドラゴン討伐クエストから意気揚々と帰ってきた【アズキ】、【キナコ】、【マッチャ】__それに、仲良さげに会話している優太と青木が歩いてくるのだった。 【ホワイトドラゴン は レア物 を 出すから 助かる な 。それにして も 、ユウタ 、アオキ __そんな に 仲よくして …… ……さすが は 、コイビトドウシ だな !! なに は ともあれ …… ……今日 は 早め に 休もう …… ……これから 、きっと 忙しく なる ぞ】 引田に腕を引き寄せられ、ちらりとしか確認出来なかったものの誠には愉快げな笑みを浮かべつつ馴れ馴れしく優太と青木をからかう男が【アズキ】だと直ぐに分かった。 【アズキ】は雪菜が過去の記憶の中でのゲーム画面で作り上げていた主人公キャラクターに容姿が瓜二つだったからだ。

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