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再会は宿屋にて③

「えっとさ……マコトは何か勘違いしてない?いくらミラージュの未来を背負うシリカ様に対して、ミストもサンも彼の意思を全否定する気なんてないよ。それは、彼の父親である王様だって、そう……。いくら危険だからって、彼の成長を邪魔する気なんてないしそれを責めるつもりもない筈だよ。でも、マコトの言いたいことも分かってる。だからさ……あの中にいる冒険者そっくりな姿になって皆で順番に宿屋に入ればいいんじゃない?」 「最初に私とシリカ様……それから、魔法がある程度使えるミスト……そして、マコトとヒキタ__お前らが最後に来れば良いだけのことだ。先に私とミストが入ってれば、非常事態が起きても多少は対処できるからな」 つまり、時間差で順番に宿屋の中に入るということか__と理解した誠は幼いシリカが一人で入らないのであればと納得してコクリと頷いた。それでも、胸にはモヤモヤした得体の知れない不安さがあるものの、このままこの吹雪が吹き荒ぶ外にいても何も事態は変わらない。 何とかして、優太と青木を助けなければ___と、一抹の不安を抱えながらもギュッと固く拳を握るのだった。 ◆ ◆ ◆ 各々が宿屋内にいる冒険者の格好をした男達と瓜二つな姿へと変化した。変化魔法に長けているシリカは自力で行い、その他はミストの魔法で変わったのだ。 そして、先ほど話し合った作戦どおり__誠と引田が共に宿屋内に入る時が来た。宿屋内に入ると、冒険者の格好をした男ばかりいると予想されるため混乱しないようにと互いに合図し合うということも念のために決めておいた。 「大丈夫……シリカとかいう王子様は根は強い子だから大丈夫だし、もちろん__サンもミストも大丈夫……。あんなに弱気になるなんて、誠らしくないよ。優太と青木だって、絶対に__ぼくらの元に戻ってくるよ…だから、行こう!!」 「ああ……。引田__ありがとうな」 ギィッ___と扉を開けて、大事な仲間が待っている宿屋内へと足を踏み入れる。 しかし、身に付けている防具や髪型__果ては顔や会話の内容までもが全て同じ冒険者の男達とカウンターに人形のように立っている宿屋の娘以外にはパッと見たところ__他には誰もいない。 優太や青木の姿もない____。 【 …… …… 】 宿屋の娘の左上にはマンガのコマのような吹き出しがピコンッと音と共に現れ《…… ……》と浮き上がるばかりで暫く待ってみても無反応なため仕方なしに既に《身なりだけでなく顔つきや発する台詞までもが同じ冒険者の男達》として溶け込み紛れ込んでいるミスト達を探して合流するために事前に決めておいた合図を試すことにした。 そのためには、一度席に座る必要があるため宿屋の入口から一番近くの椅子に座ると緊張しつつ誠は《身なりだけでなく顔つきや台詞までもが同じ冒険者の男達》が繰り返し発している会話を向かいで座る引田へと言いながらトン、トントンと一定のリズムで中指を机に軽く叩きつけるのだった。

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