586 / 713
生まれ変わった【アズキ】の攻撃!!だが、誠達一行は《宿屋》から出られない!!③
【アズキ】は、心の底から満足そうな笑みを浮かべて人間のような素振りを見せつつ、つい先程【幸福に包まれる雪菜】を利用して引田を退治したのと同様に、己の剥き出しとなった【心臓から生える細長いモノ】を自在に操りながら今度は周りで倒れているダイイチキュウから来た人間達の体へ向かって【幸福に包まれる雪菜】が持っているウェディングナイフを素早く投げたからだ。
それは、仲間である引田が【アズキ】によって退治されるという大ピンチともいえる状況に果てしない危機感と身を焼き焦がすような凄まじい怒りを感じた誠が遂に行動に移したからだった。
宿屋の扉のすぐ右脇にある壁に掛けられている《三枚の絵》に違和感を抱いた誠が、それを己の方へと引き寄せるために最初はミストから借りた杖を使って再び黒スライムを召還させようとしたものの何故かうまくいかない。
黒スライムは出現させることは出来たものの、ピクリとも動こうとしないせいで、痺れを切らした誠が自分自身の足を動かして【壁に掛けられている三枚の絵】を取りに行こうと駆け出したため、【アズキ】は次なるトモダチを作り出して誠を退治しようとするのだ。
ナイフを次々に体へと刺されたダイイチキュウの人間達は、退治された引田と同様にドット絵のキャラクターのように縮まり、尚且つ頭上には【 † 】のマークが浮かび上がる。
しかし、彼らは引田と違って単に退治された訳ではないと瞬間的に察知したサンはまるでゾンビのようにムクリと起き出し気味悪い呻き声をあげながら甦ると扉に向かって駆け出す最中の誠に襲いかかろうとしている彼らに狙いを定め弓矢を放った。
しかし、【アズキ】がそれを阻止したせいでサンの弓矢は虚しくも床へと落ちていく。
その光景を目の当たりにしたミストは、咄嗟に誠が勢いよく駆け出したせいで床に転がった己の武器である杖を見つけサッと拾いあげると、被害が増幅しないようにとある魔法を唱える。それは、攻撃魔法ではなく《結界を張る》ための防御魔法だった。
それは、扉に向かって駆け出している誠に対する魔法でも――ましてや、既に【アズキ】によって退治された引田に対する防御魔法ではない。自分自身と、仲間であるサン__それにオロオロするばかりのライムスや新たな仲間の黒スライム__それに、哀れなダイイチキュウから連れて来られた人間らを守るための結界を周囲に張り巡らせたのだ。
敵を退治するための重要なヒントに気付いて行動に移す誠には、結界魔法をかけられず【生まれかわった人間達】の群れから無防備に攻撃されそうになっている誠を見て不安を覚えるミストだったが、もはや自分達には仲間である彼を信じることしか出来ないため張り巡らせた結界内にいる三人の人間の看病をすることにした。
三人共、この世界に閉じ込められたせいで憔悴して精神的に弱ってはいるものの、肉体的にはさして異変はないようだ。ミストが話す内容にも、割りとハッキリと受け答え出来ている。
「……僕のペットのトカゲが――どこにも……いない……こんなことになるなら……あんなゲーム、しなきゃ良かった……オンラインゲームなんて……っ……」
その内の一人の人間が、ふいに気になることをブツブツと呟いたため、気になったものの__その直後、ミストにとってもっと気になることが起きたため結局その人間に問うことは出来なかった。
「ま、誠……っ____!?」
扉のすぐ右脇の壁に掛けられている【三枚の絵】を外そうと四苦八苦している最中、誠はとうとう【生まれかわったダイイチキュウの人間】のゾンビのような群れによって攻撃されてしまった。
そして、こう誠の頭上に浮かび上がる。
【サラリーマン の おとこ の 攻撃 !! マコト
に ゑヱЁゑё の ダメージ !!】
ゾンビのようになったダイイチキュウの人間の群れの中にいるサラリーマン風の男の攻撃は、奇怪なもので分厚い書類を丸めたものをゲームキャラクターさながら剣を振るかのように誠に当ててきたのだ。
そして、誠の右腕はその攻撃が当たってしまったせいで変化する。彼もまた、攻撃をしてきた者たちと同様に、体の一部である右腕がゲームキャラクターさながらドット絵の如く徐々に変化していき、尚且つ自由がきかなくなってしまう。
それは、腕全体が正方形の四角いピースとなっていき、パズルのように段々とはまっていき、やがて誠の右腕は石のように固くなっていったためだ。
「こ……っ…………これじゃあ……」
『使い物にならないじゃないか!?』と思わず声に出しそうになってしまった誠の目の端に、今度はサラリーマン風の男ではなくメガネをかけた如何にもオタク風な男の姿が映る。
そのオタク風の男は、小さく縮まり、尚且つドット絵キャラクターさながらの姿となったとは
いえ不気味に微笑みながら【バグ因子】の誠を退治するべく襲おうとしてくるのだった。
ともだちにシェアしよう!