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誠達一行は共に《宿屋》の外に出た!!しかし、新たなる敵があらわれた!!④
「……っ___!?」
一行が一斉に見上げた真上に浮かんでいたのは、ついさっきまでは《宿屋の中》にいたはずの【アズキ】だ___。
誠達一行が《宿屋の外》へ出てしまい、僅かとはいえども、ピンチに陥ってしまったにも関わらず、その顔には人間のような笑みを浮かべている。
《宿屋の中》で見た時のような、とまではいかなくとも余裕さが滲み出ている笑み方だ。
容赦なく吹き付けてくる吹雪の寒さに凍え表情ひとつ変えず、更には刃物を突き刺しても痛覚がなく平然としていた【アズキ】は、やはり普通の人間やミスト達エルフとは違って、このミラージュに本来ならば存在しないはずの【ダイイチキュウのゲーム内にいるキャラクター】なのだと理解出来る。
その【アズキ】が、笑みを浮かべながらパチンと指を鳴らすと、誠達一行を矮小な存在だ___といわんばかりに見下しながら、こう言うのだ。
【 そ の とお り !! こ の 、、 素 晴 ら しい
世界 に 永久 に いる こ と が どれ だけ 幸福
か _ _わ、わ、分から ない バグ 因子 の お、お、お前ら に も これ から …… ……ピンチ が 訪れ よう と、、 と …… ……して、いる ……の は 分かる よう だ な __ __ 出でよ 、《アス・イムリク》 !! 】
と、その壊れかけた機械みたいな声が横殴りの雪が吹きすさぶ白銀世界に響き渡った__と一行達が理解した瞬間、真上から耳を塞がざるを得ないくらいに大きな咆哮が襲いかかってくるのだった。
「誠……あ、あれって__もしかして……っ……さっきのトカゲなんじゃ……っ……!?」
「な……っ…………」
突然の大きな咆哮に耳を塞ぎつつ、容赦なく打ち付けてくる雪のせいで何とか薄目を開けていた優太が戸惑いをあらわにしながら傍らにいる誠へと言う。
確かに、優太の言う通り――真上から咆哮を轟かせる【新たなる敵】は、先程まで降り積もる雪に埋もれていて背中に二つ傷のあった【トカゲ】と瓜二つだったのだ。
つまり、それは元々は三人のうちの《ダイイチキュウからきた学生風の少年】の愛玩するペットだということで【アズキ】が利用し操っている、ということを意味していた。
それと同時に、ただでさえ【アズキ】に攻撃を加えダメージを与えられないというピンチに拍車がかかってしまった。
《アス・イムリク》と【アズキ】から呼ばれた新たなる敵に直接攻撃を加えられないということに繋がってしまうからだ。
その証拠に、サンやミストが各々の武器を構えてはいるものの、攻撃に踏み出せない状況から焦りの様子をあらわにしている。
ミストに至っては、三人の《ダイイチキュウからきた学生風の少年たち》を守る結界を張るのに精一杯だといわんばかりに目元をひそめている。
その誠達一行の状況をよし、としたためか【アズキ】が更に行動に移す。再び、己の手首にナイフを深々と突き刺し、細長く伸びる赤と青の血管を自在に操り始めると今度は誠達一行の真上で浮かび二度目の咆哮をあげようと身動きしていた【トカゲのアス・イムリク】の真っ白い体へと針のように鋭く尖った血管の先端を勢いよくブスリと突き刺したのだ。
先程とは比べ物にならないくらいの凄まじい迫力で【トカゲのアス・イムリク】の口から苦悶の咆哮が白銀世界に響き渡るのだった。
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