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誠達一行は共に《宿屋の外》へ出た!!しかし、新たなる敵があらわれた!!⑤
暫しの間、凄まじい咆哮が辺りに響き渡ったかと思った直後だった。
【トカゲのアス・イムリク】に予想外な異変が起こる。今までは、ダイイチキュウにいた頃のように人間の手のひらくらいの大きさだったのが、徐々に巨大化していく。
誠と優太がパッと見ただけでも、ダイイチキュウで暮らしていたビル――おそらくは五階立て程に巨大化した後に新たなる異変が起こるのだ。
【トカゲのアス・イムリク】は赤ワインの如き真っ赤な二つの瞳で、予想外の事態に直面して棒立ちしている誠達一行を睨み付け、半開きとなって銀色の牙が見える口から、どことなく苦し気な唸り声を漏らしていたが、ひときわ大きな唸り声を漏らした後に元から背中に出来ていた二つの傷跡の箇所から赤い翼と青い翼をむくむくと生やしていく。
さながら、ドラゴンのような両翼___。
しかしながら、ほぼ同時に誠と優太の頭の中で思い描くドラゴンとは似て非なる箇所があった。
背中の傷跡から生えている両翼が、まるでトンボのように透き通っていて想像上のドラゴンよりも美しく目を奪われてしまう。また、雪に覆われた白銀世界の中で見たため尚更、美しさを感じてしまったのだ。
けれど、そんな僅かながらの感動も【トカゲのアス・イムリク】が次に起こした行動で風に舞う雪のように吹き飛んでしまう。
透き通る赤と青の両翼をはためかせながら、宙へと浮かび上がった【トカゲのアス・イムリク】は余りにも唐突すぎてこの事態を受け入れられていない誠達一行へと襲いかかる。
【アズキ】によって《細長く伸びる赤と青の血》を、まるでペットだといわんばかりに首にぐるぐると巻き付かれた【トカゲのアス・イムリク】____。
完全に、その意思は【アズキ】によって悪い方へと操られてしまっているため、その矛先が戸惑いの色を浮かべる誠達一行へと向けられたのだ。
「おい、優太……っ___危ない……っ……避けろ!!」
「あ……っ…………」
真っ先に【トカゲのアス・イムリク】の鉤爪攻撃の的となってしまったのは運悪くヤツの頭上からすぐ真下にいた優太だった。
咄嗟に逃げようとした優太だったが、ビル程の大きさへと巨大化しているにも関わらず、【トカゲのアス・イムリク】の動きは素早く、なおかつ攻撃も的確だったため優太はその攻撃から逃れられず雪上へと倒れてしまう。
誠はすかさず、雪上へと力なく倒れた優太の方へと駆けよろうと行動し、その一方でサンは両翼が生え、奇妙なドラゴンのような姿へと変化した【トカゲのアス・イムリク】の背に乗っかり空中を優雅そうに浮遊している【アズキ】に向けて連続矢を放つ。
しかし、やはりサンの弓矢による攻撃は【アズキ】へと到達する前に弾かれ下に広がる雪の絨毯へと突き刺さってしまう。それだけならば、まだいいけれど己に向けて弓矢を放ったサンに対して煩わしくなったせいか【アズキ】は、もはや操縦自在のペットと化した【アス・イムリク】へと次なる命令を下す。
その瞬間、【トカゲのアス・イムリク】の口から放たれた幾重もの氷柱がサンに襲いかかる。それを傍らで目にしていたミストが咄嗟に防御壁の魔法を詠唱したが、いくら魔法に長けているミストといえど二つ同時に防御魔法を唱えるのは苦だったせいか結局は間に合わず__何個もの氷柱はサンへと直撃し、優太同様に雪上へと倒れてしまった。
サンの頭上には、宿屋にいる引田と同様の《†》の文字が浮かび上がった。
【そ んな 攻撃 など 効かない ことが 分か った
かい ? ? ? まあ 、、いい さ …… …… この ま
ま お前 たち バグ因子 を 、、 この 世界 へ 引きづり こんで やろう じゃない か !! 】
「マ、マコト……ッ……ヒキタだけじゃなくて、サンまで……こ、このままじゃミストも――それに、みんなも___」
誠は、目の前に広がる雪景色のような真っ白な頭で必死に考えた。これまで、ピンチに見舞われた時に色んなことを教えてくれて助けてくれた引田や、攻撃手として活躍してくれたサンは既に敵の手中へ堕ちかけてしまっている。
妹の雪菜同様に、一番愛していて__尚且つ、側にいてくれた優太も雪上に倒れてしまっていて無理などさせたくはない。
それは、何も優太だけではなく、今も傍らで本当のトカゲの飼い主を含んだ【ダイイチキュウ人たち】を防御壁で守ってくれているミストに対してもそうだ。
(俺がどうにかして――アズキを退治する方法を考えて、このピンチを救うしかない……そもそも、アズキは……俺が考えて造ったキャラクターなのだから……っ__その責任は俺自身がとらなくては……)
そう固く決意しながら、余裕だとばかりにトカゲの背に乗りつつ空中を浮遊し続ける【アズキ】を冷たい目で睨み付けるのだった。
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