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誠はピンチを打開するアイディアを思いついた!!②

幼い頃、穏やかな笑みを浮かべる父が頭を撫でてくれた思い出____。 ダイイチキュウの《学校》で優太や想太郎、それに引田や青木――それに転校生の知花として現れたチカと日々を過ごした思い出____。 父が仕えていたミラージュ王に、共に仕えていたというエルフのミスト、サン、ナギとの最悪な出会いの思い出____。 そして、この白銀世界に来たばかりの時に今は行方が分からなくなってしまったシリカが氷の割れ目に足をとられ、冷たい水の中へと落ちてしまったことや、優太が真下に広がる氷の上に尻もちをついて、あわや水の中に落ちてしまいそうになったことまで明確に思い出した。 それを踏まえて、今__誠がしなくてはならないことは二つある。 そのひとつは、ミストが張っている結界を何とか守りきらなければならないこと。 そして、もうひとつは__仲間全員で無事この狂った白銀世界から逃げ出すために、思いついたアイディアを発揮し本当の《バグ因子》である【アズキ】をやっつけること。 (そのためには……何とか空中にいるヤツらを引き連れ――此処から離れてから、ある場所に行かなくては__でも、気を引かせるにしても無敵状態のヤツらには物理攻撃も魔法攻撃も効かない……いったい、どうしたらいいんだ……っ……) 誠は、空中で飛び交いながら次なる攻撃を真下のミスト達に仕掛けようとしてくる【アズキ】と【アス・イムリク】を見上げながら苦虫を噛み潰すかのような表情を浮かべる。ヤツらに攻撃を仕掛け、気を引かせてある場所へと強引に誘導しようと考ええみたものの、肝心の攻撃がヤツらに効かないのであれば意味がない。 口をパックリと大きく開け、凍てつく雪を吸い込んで次なる攻撃の準備をしている【アス・イムリク】__。 次なる攻撃は、おそらくゲームであれば即死級の大技が誠達や崩れかけた結界の中にいるミスト達を襲うのが容易に想像できる。 つまり、悠長に悩み続けている場合じゃないのだ。 悶々と悩み続け、無為に時を進ませていくのではなく実際に行動してみなければ――と思い直した誠は、まずは先程から頭の中に思い描いていた目的の場所へと向かうのではなく、少し離れた場所でグッタリと倒れているサンの元へと急いで駆け寄っていく。 ちら、と横目で【トカゲのアス・イムリク】や【アズキ】の動向を伺ってみたが、どうやら此方に興味などないらしく目すら向けようともしなかったのは、誠にとって最大のチャンスだった。 (サン……済まないけれど……お前の弓矢を貸してくれ……俺が思い描く作戦に、どうしても……これが必要なんだ……っ____) 頭上に【 † 】マークが浮かびあがったまま、ピクリとも動かないサンへと心の中で謝罪すると彼が背負ったままの袋から数本の弓矢を拝借した。 そして、ぐっ――と力を込めて息を大きく吸うと、それを吐くのと同時に手に持っている弓矢を【トカゲのアス・イムリク】の赤く光る目へと向けて渾身の力で投げたのだった。

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